2012 Fiscal Year Research-status Report
公表情報が証券市場における投資家の意思決定に与える影響-社会責任情報を中心に-
Project/Area Number |
24530380
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Fukuyama University |
Principal Investigator |
三川 敦 福山大学, 経済学部, 准教授 (60239283)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
塚原 一郎義治(塚原一郎) 福山大学, 経済学部, 准教授 (80550996)
古市 雄一朗 福山大学, 経済学部, 講師 (40551065)
久松 太郎 神戸大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (60550986)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | ファイナンス / 投資意思決定 |
Research Abstract |
研究会報告「財務省財務総合政策研究所研究報告会」(2月20日) タイトル:「環境配慮行動が株価に与える影響に関するパネルデータ分析」 概要:本報告においては、企業の環境配慮行動が株価に与える影響について検討を行った。本研究においては、環境管理計画の取り組みを公表している企業を環境配慮企業と定義し、証券市場がその企業をどのように評価しているかを分析した。 本研究においては、企業が環境配慮行動を行うことのインセンティブを企業の社会的責任というような立場からは求めていない。むしろ、企業が環境配慮行動を行うことが企業が負っている種々のリスクを回避し長期的な企業価値を高めるのではないかと考えている。 環境配慮行動と株価との関係が負の相関を示していることから、企業が環境配慮行動を行ったからと言って、投資家がそれに反応して投資を行うという可能性は計量的には説明されないことが確認された。一方で環境配慮企業の株価および利益(EPS)のボラティリィティはそうではない企業に比べて低く、投資リスクが低いため長期的には、企業の価値を高める可能性が指摘できる。環境配慮行動は、企業の環境投資に伴う支出を平準化するために将来のボラテリティが低くなると考えられる。環境配慮行動の導入前後では、利益(EPS)と株価のボラティリィティはそうでない企業とは逆に低くなっている。上記の点から,企業の環境配慮行動が企業にとっても投資家にとってもメリットとなる可能性が指摘できる。 その他,学内の第5回経済学研究会で発表「環境配慮行動が企業価値に与える影響」(10月31日)
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は[第1段階:理論的背景の研究と基本モデルによる推定]として,ほぼ計画通り以下の研究を進めた。 ・企業価値と株価についての歴史的考察(久松)・株価と会計情報に関する会計学上の実証研究のサーベイ(古市) ・先行研究部分から得られた従来のモデルが抱える問題点の検討についての研究会報告「財務省財務総合研究所研究会報告」(三川・塚原・古市)・データ収集と整理(塚原) ・投資家の意思決定への時価情報の影響を測るための基本モデルの推定(三川) ・推定結果に対する会計学、およびファイナンスからの理論的考察(久松、古市)これらにより,以下の結果を得た。 ・環境配慮行動と株価との関係が負の相関を示し,企業が環境配慮行動を行ったからと言って,投資家がそれに反応して投資を行うという可能性は計量的には説明されないことが確認された。 ・一方で環境配慮企業の株価および利益(EPS)のボラティリティはそうでない企業に比べて低く,投資リスクが低いため長期的には,企業の価値を高める可能性が指摘できる。・環境配慮行動は,企業の環境投資に伴う支出を平準化するために将来のボラテリティが低くなると考えられる。環境配慮行動の導入前後では,利益(EPS)と株価のボラティリティはそうでない企業とは逆に低くなっている。・企業の環境配慮行動が企業にとっても投資家にとってもメリットとなる可能性が指摘できる。 自己点検評価を「おおむね順調に進展している」にしているが,次の点で少し計画が変わっているためである。データ入力は塚原の方ですこしずつ入力などを行い,院生などを雇うまでの必要はなかった。また,久松は学外に資料集めなどに出向く予定であったが,神戸大学にある豊富な資料などを中心に企業価値と株価についての歴史的考察を行っため,出張旅費を使用せずに平成24年度を終了している。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は,当初の計画通り研究を進めることができた。よって平成25年度も原則として当初の予定通り[第2段階:応用モデルによる推定、および日米欧比較]として 以下の方策で研究を推進する。 ・パネル構造やタイムラグを考慮した推定(塚原、三川) これまでの研究の成果を踏まえて今後は,企業数Nと時間Tというパネル構造を考慮して,経済主体間の異質性をコントロールするとともに,ラグ構造も考慮した推定を行っていく。 ・米国の証券市場における上記モデルの当てはめ(塚原) ・日米欧の証券市場における傾向の相違についての会計学,およびファイナンスからの理論的考察(久松、古市) ・パネル構造やタイムラグを考慮したモデルから得られた知見と検討課題についての学会報告(三川)
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
11.現在までの達成度にも書いたように,データ入力は塚原の方ですこしずつ入力などを行い,院生などを雇うまでの必要はなかったが,第2段階に入るため,データ入力を1人でやるには無理があると考える。そのため,平成25年度の人件費・謝金は,平成24年度の未使用金と合わせて68,160円を予定している。また,久松は学外に資料集めなどに出向く予定であったが,神戸大学にある豊富な資料などを中心に企業価値と株価についての歴史的考察を行ったため,出張旅費を使用せずに平成24年度を終了している。しかし,さらなる研究資料を求めての出張や,研究打ち合わせのための出張も数多く必要となると考える。したがって,平成25年度は平成24年度の未使用金とともに,久松の310,000円を含めた1,180,200円を計画している。これらには,研究打ち合わせの他,成果報告のための旅費も含んでいる。また,物品については,古市・久松2名のパソコンの他,USBなどの購入も含めた358,933円を予定している。以上より,平成25年度は合計1,607,293円の予算執行を計画している。
|