2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24530383
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
内藤 隆夫 北海道大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (60315744)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 鉱山業史 / エネルギー産業 / 佐渡鉱山 / 石油産業 |
Research Abstract |
昨年提出した交付申請書中の「平成24年度の研究実施計画」に基本的にもとづいて本年度の研究を遂行した。 第一に、研究史的に全く遅れている佐渡鉱山史に関する史資料の収集に努めた。具体的には、①三菱史料館所蔵にかかる佐渡鉱山『年報』各年、②旧帝国大学を中心とした鉱山学科・応用化学科等の学生が行った鉱山実習報告、③金銀の選鉱・製錬に関する技術書・文献等を収集し、その熟読や分析を行った。 以上①~③の作業をもとに、まず明治期の製錬部門に関する技術導入の経緯・内容・意義と限界等に関する論文「明治期佐渡鉱山の製錬部門における技術導入」を執筆して所属先紀要『経済学研究』に投稿し、同論文は第62巻第3号(2013年2月)に掲載された。次に、佐渡鉱山史の基本資料の一つと言える『佐渡鉱山史』の復刻に際しての解題である「【解題】『佐渡鉱山史』第二十回・第二十一回」、及び昭和期の選鉱・製錬部門における画期的技術である浮遊選鉱法の導入と展開に関する論文「浮遊選鉱法の考察」を執筆し、両者は『受託研究「佐渡金銀山の歴史的価値に関する研究」2012年度調査報告書』(小風秀雅編集・発行、2013年3月)に掲載された。また、②の資料の収集後、その分析を進める過程で中間報告を兼ねて、2012年10月に行われた世界遺産国際シンポジウム「歴史資料から見る佐渡金銀山」(新潟県教育委員会・佐渡市主催、於アミューズメント佐渡)において、「実習報告から見た佐渡鉱山の技術」と題した口頭報告を行った。 第二に、石油産業史研究について、『中外商業新報』のマイクロフィルムを収集・閲覧した。本年度は1921年分を閲覧の上、当該期の石油産業あるいは石油市場の動向の検討を始めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第一に、佐渡鉱山史研究については、当初は史資料の収集と分析に止まる予定であったが、実際には上記「研究実績の概要」で述べた通り、口頭発表及び複数の論文執筆まで行うことができ、予定以上に進捗したと言える。第二に、石油産業史研究については新聞の収集と閲覧を当初の予定通りに進めることができた。また、「研究実績の概要」では触れられなかったが、近年の石油産業に関する論文「1980年代から90年代中期の石油政策」(北海道大学『経済学研究』第62巻第1号、2012年7月)、近現代の石油産業史に関する研究の書評「書評 橘川武郎著『日本石油産業の競争力構築』」(『社会経済史学』第79巻第1号に掲載予定)を、それぞれ執筆できたことは、鉱山業を中心とした近代の石油産業史研究という本研究を遂行する上で、問題意識を鮮明にするのに寄与したと考えている。この点に関しては、イギリスを中心とした産業革命像に関する研究の書評(「書評報告 長谷川貴彦著『産業革命』」政治経済学・経済史学会北海道部会、北海道大学、2013年2月)、19世紀日本経済に関する概説(「成長の19世紀」中西聡と共著、中西聡編『日本経済の歴史』名古屋大学出版会、2013年5月刊行予定)の報告あるいは執筆も、同様に寄与したと考えている。第三に、北海道石炭産業史については史資料の収集自体においては目立った成果を挙げられなかったが、戦時期以降の北海道を中心とした石炭産業史に関する研究の書評「書評 島西智輝著『日本石炭産業の戦後史』」(『日本歴史』近刊に掲載予定)を執筆する過程で、新たに多数の史資料の存在を知ることができた。 なお、本年度の主目的であった史資料の収集について、例えば実習報告の閲覧・複写に際しては、所蔵大学にそれを請求したが個人情報保護を理由に閲覧すら断られる場合があり、収集が思うように進まなかったのは残念であった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度も、本年度に引き続き史資料の収集と入手済資料の分析を中心に研究を進める。具体的には、第一に石油産業史研究について、①昨年度後半から開始した『中外商業新報』マイクロフィルムの収集及び閲覧と分析に力を入れる。同紙の記事や相場情報などをくまなく追うことによって、1920年代の石油産業と石油市場の動向を把握し、1910年代のいわゆる「内外四社協定」以来のカルテルがいかなる経緯によって破綻し、「石油業法」制定による国家統制へと移行するのかという問題についての、解明の糸口を得ることが狙いである。それとともに、②本年度はできなかった愛知大学への訪問・調査を行うことによって、戦間期の石油産業に関する資料の収集を行う。また、③同じく本年度はできなかった中野重孝家への訪問・調査によって、明治期から戦間期における個人精製業者の成長から大協石油設立に至るまでの事業展開について検討し、こちらは可能であれば新所属先(東京経済大学)の紀要に投稿したいと考えている。 第二に、佐渡鉱山史研究については本年度は選鉱・製錬部門の検討が中心だったので、次年度は採鉱部門を中心に検討したい。「研究実績の概要」の①②で示した、本年度に収集した資料に加え、採鉱に関する技術書・文献を収集し、それらの分析に努めたい。 第三に、北海道石炭産業史については、①明治初期の斯業について、官営事業の再検討を行うべく、北海道大学附属図書館・北海道立文書館・北海道開拓記念館などを訪問しての資料収集を行う予定である。また、②北海道炭鉱鉄道(汽船)を中心とした北海道の石炭産業と地域経済の関係について、上記『中外商業新報』の記事や、地方史関係の雑誌などの閲覧を通じた資料収集を行いたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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