2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24530383
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Research Institution | Tokyo Keizai University |
Principal Investigator |
内藤 隆夫 東京経済大学, 経済学部, 教授 (60315744)
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Keywords | 鉱山業 / 石油精製 / 大協石油 / 石油カルテル / 佐渡金銀山 |
Research Abstract |
第一に、石油産業史研究について、「製錬(精製)技術」の視点から、明治~大正期にかけて潤滑油(当時の名称は機械油)の生産を中心に事業を行い、その分野で一定の競争力を有した個人精製業者の活動に注目し、その中で後年の大協石油の前身となった石崎製油所の事例に即して論文「明治期石油精製業者の製造・販売活動と原油調達」を執筆した。そして、同論文を所属先紀要『東京経大学会誌』に投稿し、第279号(2013年12月)に掲載された。また、「国家統制との関係」の視点から、『中外商業新報』のマイクロフィルムを購入して熟読し、1920年代を中心とした戦前日本の石油カルテルの動向に関する多数の資料を収集した。同カルテルが有効に機能せず、「石油業法」制定による斯業に対する国家統制につながった経緯や意義について、平成26年度中に論文にまとめる予定である。 第二に、佐渡鉱山史研究について、その基本資料の一つである『佐渡鉱山史』の復刻に際しての解題として、「【解題】『佐渡鉱山史』第二十二~二十四回」及び「【解題】『佐渡鉱山史』第十三~二十四回」を執筆し、同資料の近代全体に関する見取図を得た。また、佐渡を中心に三菱が蓄積した金銀の採鉱・製錬技術の、植民地期朝鮮への移植について、当該期朝鮮の産金業及び産金政策の展開と併せて検討し、「植民地期朝鮮における産金業・産金政策と三菱の事業展開」を執筆した。これらは全て『受託研究「近代の佐渡金銀山の歴史的価値に関する研究」2013年度調査報告書』(小風秀雅編集・発行、2014年3月)に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第一に、佐渡鉱山史研究については、当初はあくまで史資料の収集と分析を中心とする予定であったが、実際にはそれが非常に順調に進んだことから、「明治期佐渡鉱山の製錬部門における技術導入」「植民地期朝鮮における産金業・産金政策と三菱の事業展開」等の成果を生み出すことができ、予定以上に進捗したと言える。 第二に、石油産業史研究についても、新聞の収集と閲覧を当初の予定通りに進めることができ、平成26年度中には成果が得られる見通しとなった。それに加え、上記「研究実績の概要」で述べた通り、石油精製業者の活動に関する論文を執筆できた。こちらも予定通り、あるいはそれ以上に進捗したと言える。 ただし、北海道石炭産業史研究については、この二年間を通じて予定通りに進捗したとは言い難い。したがって、今後はこのテーマに重点を置いて取り組む必要があるが、場合によっては、研究が順調に進展している佐渡鉱山史研究と石油産業史研究に重点を置いた方がよいかも知れない。
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Strategy for Future Research Activity |
第一に、石油産業史研究について、「製錬(精製)技術」の視点から、個人精製業者の研究として、前年度の論文で検討した石崎製油所の事例を参照しつつ、それに加え昭和石油の前身となった新津石油・早山石油の事例分析と、機械油の生産技術の分析とを併せて、社会経済史学会第83回全国大会(同志社大学)で報告する。また、「国家統制との関係」の視点から、戦前日本の石油カルテルについて、これまで収集してきた新聞を中心とした資料の分析を進め、学生時代の指導教員の退職記念論文集に収録すべく論文を執筆する。 第二に、佐渡鉱山史研究について、佐渡鉱山が三菱本社に提出していた『佐渡鉱山事業報告』(各回)という、『佐渡鉱山史』と並ぶ基本資料と言い得る性格を持ちながら、これまで一部を除き閲覧できなかった資料の筆写が認められたので、他の研究者と協力して作業を進める。また、佐渡鉱山の世界遺産化を推進する新潟県から、これまでの研究成果の中間報告を提出するよう求められているので、採鉱・製錬技術を中心とした近代佐渡鉱山の展開についてまとめる予定である。 第三に、北海道石炭産業史研究については、「現在までの達成度」で述べた通り、上記二つのテーマに比して遅れているので、まずは資料収集に力を入れていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は物品費としてパーソナル・コンピューターや新聞のマイクロフィルム等、比較的単価の高いものを中心に購入したため、端数として1万円弱の次年度使用額が生じた。 次年度使用額として生じた金額は1万円未満であり、本年度の消耗品費等で使用する予定である。
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