2012 Fiscal Year Research-status Report
中華人民共和国成立直後の中国江南における土地改革の実証的研究
Project/Area Number |
24530385
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
夏井 春喜 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (80155978)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 土地改革 / 江南 / 地主制 / 田面権 |
Research Abstract |
本研究計画は、地方新聞・档案館等の第一次資料に基づいて、中国江南地方における土地改革の実態を実証的に解明しようとするものである。この研究目的を達成するために、本研究計画では次の三点の研究方法をとっている。第一は、地方新聞・地方档案館の第一次資料に基づいて、江南の土地改革の実態、特に田面権と地主の対応という点から分析するとことである。第二は、清末からの江南の地主ー小作制の実態と変化という長い時間の文脈で土地改革をとらえようとすることである。第三は、地域的に隣接するが、時期と農村社会経済状況が異なる蘇北と比較対照することで、江南の土地改革の特徴と意義を明らかにすることである。 平成24年度は本計画の第一年目として、次の2点を中心に行った。第一は、蘇北をはじめとする中華人民共和国建国前後の土地改革に関する資料・文献の収集である。蘇北についてはこの時期発行されていた地方新聞のマイクロフィルムを購入し実態の解明に取り組んでいる。中南・華南での土地改革についても、筑波大学・東京大学・アジア経済研究所、台湾の中央研究院所蔵資料の収集を行った。第二は、江南の档案館等に所属されている文書資料等の調査である。蘇州・呉江・常熟・上海を訪問し、蘇州市档案館・呉江档案館・常熟市档案館の所蔵資料について調査し一部筆写或いは電子複写による収集を行った。その結果、資料は相当量に上り筆写による収集には限界があり、土地改革前後における江南の地主-小作制との関係を考察するために、土地改革前に文書資料や農村調査資料がある地域に限定する必要を感じた。 今後『蘇南日報』・『蘇南土改情況』・『蘇南土地改革文献』・『江蘇省農村調査』等の文献資料と対照して地点の選択を行いたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は本計画の第一年目として、当初次の4点の研究計画を立てていた。(1)江南土地改革に関する基本的文献の調査・収集。(2)蘇州市档案館等の所蔵資料の調査。(3)蘇北土地改革に関する新聞資料及び蘇北地方の実態調査資料の収集、(4)土地改革に関する文献の収集である。 第一点に関しては、基本文献である『蘇南土地改革文献』・『蘇南土改情況』については、蘇州市档案館に所蔵され、『蘇南日報』は上海図書館に所蔵されていることが調査により明らかになったが、筆写による収集となるため、本格的収集は25年度に行うこととなった。その他幾つかの文献資料については収集を行った。第二点に関しては、蘇州市档案館・呉江市档案館・常熟市档案館を訪問し、土地改革関係資料の所蔵調査を行い、一部については筆写、許可されたものについては電子複写による収集を行った。第三点の蘇北の資料収集に関しては、土地改革時期のマイクロフィルム化された『新華日報(華中版)』・『蘇北日報』等の新聞資料を購入し、現在考察を行っている。日中戦争時期に日本が行った蘇北調査についても、国会図書館・東京大学・筑波大学等において調査・収集を行った。第四点に関しては、日本国内では国会図書館・東京大学・筑波大学・アジア研究所等を訪問し、国外では台湾の中央研究院を訪問し、蘇北以外の中南・華南の土地改革に関する資料、及び研究論文の収集を行った。 以上のように、平成24年度の研究計画は、ほぼ順調に進行しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の成果を踏まえて、今年度以降は次のように研究計画を進行する。 平成25年度は資料収集において二つの重点を置く。第一点は江南土地改革の基本的資料の収集で、具体的には『蘇南土地改革文献』・『蘇南土改情況』・『蘇南日報」の閲覧・収集である。第二点は江蘇省档案館・蘇州市档案館に所蔵されている文書資料の調査・収集である。所蔵史料については、これまでの知見から複写や写真撮影が許可されない場合が多く、筆写による史料収集を行わなければならないと考えられる。したがってかなり長期間滞在し、筆写のための助手が必要となる。档案館の文書収集・分析は本研究計画の中核をなすものであり、最重要課題として行いたい。日本国内では、主に土地改革に関する論文・文献の収集を行うが、東京とともに京都大学等の中部・関西地区の大学等を訪問して行いたい。具体的史料の分析では、土地改革と地主の動向について考察を行いたい。地主の多くが都市に居住し、工商業と関わり持っており、共産党の工商業政策と関連させて分析したい。 平成26年度は、本研究計画の最終年であり、次の二点を重点的に行いたい。第一は、前年度に引き続き蘇州市档案館・常熟市档案館・呉江档案館及び上海を訪問し、資料収集を継続することである。第二は、資料を分析して江南の土地改革の実態を解明することである。平成24年度から収集した、(1)土地改革に関する基本的文献、(2)地方新聞史料、(3)档案館の文書資料、(4)土地改革に関する論文等から、土地改革前と連続的に分析可能な地域を選び、土地改革における田面権の問題、地主の動向を中心に江南の土地改革の実態を考察すると共に、地域的に隣接する蘇北との比較対象することによって、江南の土地改革の特徴と意義を明らかにしたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度においては前年度からの繰越と今年度の補助額合計約140万で、次のような経費使用の計画を立てている。 まず物品費としては、中国の土地問題・土地改革に関する書籍の購入を行いたい。預算としては10万円程度を予定している。その他プリンターのトナー・用紙・USBメモリー等の記憶媒体などの消耗品代として約6万程度を予定している。 資料・文献収集のための旅費としては次のような計画である。外国旅費として2回の中国訪問を考えている。第一回は上海へ10日間程度で、上海図書館を訪問し『蘇南日報』の閲覧・収集及び中国の学者との意見交換である。もう一回は江蘇省档案館・蘇州市档案館を訪問して、所蔵資料・文献の調査・収集である。筆写による収集が予想され、期間は約15日、筆写のための助手を帯同したい。合計約95万程度を予定している。国内旅費としては、土地改革に関する文献・資料の収集で、前年度に引き続き東京地区ではアジア経済研究所・東洋文庫等に2回(3泊4日)、愛知大学・京都大学及び国会図書館関西館の中部・関西地区に1回(4泊5日)を予定している。本研究計画では資料・文献の調査・収集が大きなウェイトを占めており、25年度の経費の中でも約88%が旅費で占められている。謝金・その他は平成25年度は予定していない。
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Research Products
(1 results)