2014 Fiscal Year Annual Research Report
中華人民共和国成立直後の中国江南における土地改革の実証的研究
Project/Area Number |
24530385
|
Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
夏井 春喜 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (80155978)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 土地改革 / 江南 / 地主 / 田面権 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画は、地方新聞・档案館等の第一次資料に基づいて、中国江南地方における土地改革の実態を実証的に解明しようとするものである。 地方文書史料については江蘇省档案館等を訪問し、許可される範囲内で資料の収集を行った。新聞雑誌資料は、上海図書館、蘇州大学、蘇州図書館等を訪問し無錫の蘇南日報・蘇南政報・蘇南大衆、蘇州の新蘇州報等の閲覧・収集を行った。また上海の解放日報と華東政報、蘇北の蘇北日報等の新聞資料についてはマイクロフィルムを購入した。さらに日本及び中国に収蔵されている1950年代初期に発行された土地改革に関する文献の調査・収集にも努め、江南以外の地域の分を含めて50種をこえる関係資料を調査した。 こうした資料及び夏井のこれまでの地主制研究から、次のような知見と課題が得られた。知見の第一は、江南の土地改革は日中戦争期・内戦期に行われた土地改革に比較すると和平的に行われ、その大きな要因として、城鎮の寄生地主である管業地主の所有地が約6割を占めていたことにあったと思われることである。戦時期に管業地主の土地及び佃戸への掌握力は低下し、地方政府の協力なしには収租不可能な状況に陥り、土地革命前に既に土地放棄の動きが出て、土地改革の阻礙要因にはもはやなり得なかった。それにも拘わらず地主批判、「江南無封建論」への批判言説が繰り返し行われたのは次の点にあった。保甲長への批判と保甲廃除、反黒田、生産救災運動、公糧徴収、減租減息等、さらには土地改革と不法地主との闘争を通じて、旧在地秩序の破壊と、農民協会による新秩序の建設が共産党政権にとって不可欠であったためであり、このため批判される「地主」は城鎮の管業地主ではなく、在地の旧保甲長、催甲等の存在であった。これが第二の知見である。課題としては、土地改革から集団化を考える上で、田面権等農民の土地所有権の歴史的再検討が必要であるという点である。
|
Research Products
(5 results)