2012 Fiscal Year Research-status Report
歴史的視点からみる日本エレクトロニクスの退潮:産業史的分析
Project/Area Number |
24530388
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
平本 厚 東北大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (90125641)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | テレビ / エレクトロニクス / 競争力 / グローバル競争 / イノベーション・システム / 産業ダイナミズム |
Research Abstract |
本研究の目標は、薄型テレビ産業での日本企業の優位の形成と行き詰まりの要因を明らかにすることにあるが、本年度はその最初の年度として、まずは①全体の歴史過程の概観と、②先行研究の調査を行ない、③作業仮説を構築する、さらに④当初の日本企業の優位の形成の局面の資料収集と分析を行う、ことを課題とした。具体的には①を『電子工業年鑑』などの二次資料や業界団体資料で行ない、②様々な既存研究を検討し、そのうえで③一応の作業仮説を整理した。④については、『電波新聞』などの業界誌と『テレビジョン学会誌』などの学会誌の収集、分析に着手した。①~③の作業の結果、優位の形成メカニズムは基本的にブラウン管テレビでのそれが機能しているのではないか、行き詰まりの要因としては、先行研究はモジュラー化の進展、投資行動の変化などに注目しているが、企業内研究開発システムの変化、企業間競争の変化、イノベーション・システムの変化も重要なのではないかという仮説を得た。その成果を産業界向けの講演ではあったが公表した(関西サイエンス・フォーラム、2013年2月14日)。しかし、④の作業は容易ではなかった。資料の量が膨大にすぎ、これまで歴史研究でとってきた悉皆収集という方法はとうてい現実的ではないことが判明した。必要情報処理量が個人の能力を遥かに超えていることが分かったからである。研究対象を限定するか(時期や技術的な対象)、資料収集の手法を変更するか、などが必須となった。そこで、ここでは研究課題はそのままに主に後者の方法をとることとした。収集する資料の時期をより限定し、かつ質の良いものに限る方法である。研究上のリスクは高いが、情報爆発下の現状ではやむを得ない措置と判断した。その試行錯誤もあり、④の作業のうち学会誌は何とか進んだが、業界誌は予定したようには進まなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
(研究実績の概要)に記したように、資料収集の規模が予想をはるかに上回ったために、本年度の予定を十分こなすことができなかった。資料収集の方法を変更することで研究の進度を予定のものに戻したい。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、資料の大胆な取捨選択を行う必要がある。業界誌の収集については、上記①の作業から日本企業の優位形成と行き詰まりのよりクリティカルな時点が明らかになった(1990年代末から)ので、その時期に集中する。次に、当時の実情により接近するため、関係者のインタビューに着手する。ついで、収集した資料を整理、分析し、上記③で構築した作業仮説の妥当性を検討する。第一の課題は薄型テレビにおける日本企業の優位の形成メカニズムの分析である。上記①、④の作業から、そのメカニズムはブラウン管テレビのそれと基本的に同形であること、しかし、共同研究の仕組みと意味などに変化が見られるという仮説的な見通しが得られたので、その検証が焦点となる。その成果を公表する。そのうえで、上記②の作業で明らかになった韓国企業についての先行研究などを踏まえ、日本企業の行き詰まりについての資料収集と分析の局面に移る。そこでは、それまでの手法に加え、実態調査を実施して分析を深める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に予定していた事業のうち、資料収集のための出張計画が十分には実施できず次年度に繰り越すこととなった。(今後の研究の推進方策)に記載のとおり、次年度は資料収集に多大な作業が予定され、また関係者インタビューにも着手するので次年度に請求する研究費と合わせて資料収集旅費に使用したい。
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