2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24530389
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鈴木 俊夫 東北大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (00139982)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 銀行 / 引受信用 / 証券発行 / アムステルダム金融市場 / ホープ商会 / マーチャント・バンク / コミッション・マーチャント / ベアリング商会 |
Research Abstract |
現代の投資銀行の原理的な起源を探るべく,国際銀行業に関する先進国であったヨーロッパの近世初頭の商人や金融業者の営業活動に関する文献研究を実施した。最初に,国際的な交易に従事したコミッション・マーチャントの役割,手形の振出・決済,信用状と引受信用,証券の発行などについて,金融史の基本文献,商人の伝記,議会報告書などを利用して論点を整理した。 次に,東北大学付属図書館に新たに導入されたオンラインのクレス・ゴールドスミス文庫のデジタル版の検索機能を活用して,同文庫に収録されているアムステルダムの商人や金融業者の営業慣行を記載した会計手続き書,商事法解説書,交易地の商業事情紹介などの同時代の文献を検索して,当時の国際交易に従事した商人や金融業者の取引,貸付,債券発行などの実態や慣行を描写した記述を抜き出し,取引内容を具体的に解読した。その際, J. -B. Mongerなどの有力な先行研究の成果を十分に考慮したうえで実施した。以上の刊行文献にもとづく情報を,銀行業者の経営文書となるアーキヴァルな史料を用いて補強すべく,ロンドンの有力マーチャント・バンクであるベアリング商会と緊密な取引関係を有した,アムステルダムの国際金融業者ホープ商会のアーカイヴズArchief van de Firma Hope en co. (Toegangsnummer: 735)の史料を調査した。M.G. Buistが執筆した同商会の委託社史が利用している史料や目録を検討し,既にデジタルデータ化されてアムステルダム公文書館Stadsarchief Amsterdamに所蔵されている同商会のアーカイヴズのコンテンツを実際に検索し,本研究に必要な史料を確認した。今後,ロンドンのベアリング商会やN.M.ロスチルド商会のアーカイヴズにおいて追加のリサーチを行う予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
金融機関のアーカイヴズが急激な社会情勢の悪化(平成24年における欧州金融危機の発生)やTrusteesへの組織変更への対応作業に追われて,平成24年度における十分な研究協力を得ることが出来なかったため,予定された史料調査と収集作業に遅延が生じている。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在,遅延している史料調査と収集作業を平成25年度中に実施することで,アーカイヴズ側に交渉している。さらに,2008年に発生した投資銀行の「リーマン・ショック」に至るプロセスを解明し,金融規制の策定という現代的な課題との繋がりに十分に留意して研究を進めたい。平成24年開催の経営史学会全国大会の統一論題報告において英国に発生した金融危機の史的背景について発表し,討議の機会を得た。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ロンドンのベアリング商会およびN.M.ロスチャイルド商会のアーカイヴズを訪問して,アムステルダム金融業者との手形をめぐる取引関係,およびロンドン金融市場における証券発行業務に関する実態について調査・資料収集を行う。 さらに,研究協力者である英国ダラム大学のR.C.ミキ教授を招聘して,関係する日本人の研究者も含めて,ロンドン金融市場とマーチャント・バンクに関するコンファレンスを開催する予定である。
|