2015 Fiscal Year Research-status Report
19世紀末ドイツの高質品生産とその労働力基盤に関する地帯構造論的見地からの研究
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24530390
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
森 良次 広島大学, 社会(科)学研究科, 教授 (10333999)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ドイツ経済史 / 中小経営 / 高質品生産 |
Outline of Annual Research Achievements |
ドイツの高質品生産とそれを支える歴史的条件がいつどのように形成されたを明らかにすべく、平成27年度に引き続き玩具産業を取り上げ、玩具の主要生産国であるアメリカ合衆国および日本との競争関係の中で、戦間期のドイツ玩具産業の動態を検討した。その結果明らかになったのは、次の3点である。 ①第一次大戦前のドイツ玩具産業は、世界の玩具輸出の約7割を占める圧倒的な玩具生産・輸出国であり、大衆市場向けの廉価品から高価格の高質品に至るまで多種多様な玩具を世界の諸市場にむけて生産していた。第一次大戦後は、世界的な保護主義の高まりとアメリカおよび日本の玩具産業の発展により、世界市場においてその比重を低下させるものの、この間にドイツ玩具産業は労働集約的な並物品生産から資本集約的な並物品および高質品生産へと製品構成を漸次移行させることとなった。 ②ドイツ国内においては、低賃金に立脚した家内工業によるエルツ山地の木製玩具産業が衰退傾向を示す一方、ニュルンベルクの金属玩具産業では第一次大戦前より中小経営のなかから大規模な工場制工業が出現し、資本集約的な並物品生産とならび、特に第一次大戦後には高質品の生産を展開した。 ③上記のドイツ玩具産業の動態は、ドイツ国内における原材料価格の高騰と、とりわけ賃金水準の上昇によって導かれたものであり、国外に目をむければ世界的な保護主義の高まりとアメリカおよび日本の玩具産業との競争の結果とみることができる。
以上のドイツ玩具産業の高質品生産の展開のなかで中小経営はいかなる役割を果たし、その生産組織は国際比較の視点からどのような特徴をもつかを究明すること、これを今後の課題としたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ドイツでの史料調査の結果、ドイツ玩具産業とアメリカおよび日本の玩具産業との具体的競争関係を明らかにしうる諸史料を入手し、研究が進展したため。
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Strategy for Future Research Activity |
戦間期のドイツ玩具産業の動態、とりわけ高質品生産の展開のなかで、中小経営はいかなる役割を果たし、その生産組織は国際比較の視点からどのような特徴をもつかを究明すること、これが今後の課題である。
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Causes of Carryover |
ドイツでの史料調査期間が諸事情により予定よりも短くなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ドイツでの史料調査と今夏ノルウェーで開催される「ヨーロッパ経済史会議世界大会」での研究発表のために、旅費として執行する予定である。
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Research Products
(1 results)