2013 Fiscal Year Research-status Report
ポンドの譲位:一面的な衰退史とは異なる第二次大戦後ポンド史の再構築
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24530396
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
金井 雄一 名古屋大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (30144108)
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Keywords | ポンド / イギリス金融史 / イングランド銀行 / イギリス大蔵省 / ブレトン・ウッズ会議 / ユーロダラー市場 / ヨーロッパ決済同盟 / シティ |
Research Abstract |
今年度は、1967年に起きた戦後2回目のポンド切下げ、イギリスのEEC加盟問題、の2点について重点的に検討を進めた。 まず切下げを巡っては、大幅な切下げが実施されて以降もポンドの地位維持=スターリング地域維持が図られること、しかし他方で切下げ以降には次第にポンドの地位を維持することへの懐疑も広まり始めること、を確認できた。またEEC加盟に関しては、加盟交渉の過程において、ポンドの国際的地位を維持しようとする政策と、ポンドの地位低下を容認するに留まらずポンドを国際通貨から降ろそうとする政策とが錯綜し、ポンド政策が混迷することを検出した。ポンドを国際通貨の地位から降ろそうとする政策の背後にあったのは、ポンドの地位が、成長と完全雇用を確保しつつ福祉国家を形成しようとする国内経済政策を制約しているという見解である。 以上の成果に基づき、今年度は、昨年度までの成果であるヨーロッパ決済同盟の成立とそのポンドへの影響、1958年のポンド交換性回復、ユーロダラー市場生成・発展とシティの復活、に関する考察と合わせて、ブレトンウッズ会議から1970年代初頭までのポンドの戦後史を、単なる衰退ではなく「譲位」とも言うべき側面も含む過程として捉えなおす著書をまとめることができた。 ただし、ポンドが準備通貨機能の点では国際通貨から凋落したのは確かであるが、ユーロダラー市場の発展、ロンドン国際金融センター即ちシティの復活、いわゆるオイルショック後におけるオイルマネーの動向等々、戦後ポンド史における「譲位」面の存在を主張するためにはなお検討を要する論点も少なくない。それらが26年度の課題となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
資料調査については、イングランド銀行においても国立公文書館(TNA)においても予定通りに進み、25年度に検討する計画だった論点は概ね完了した。 学会報告を1回行ない、論文を1本発表し、単独著書を1冊刊行した。
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Strategy for Future Research Activity |
筆者による戦後ポンド史把握を更に説得的にするため、1970年代におけるポンドとイギリス経済の実情、さらには国際通貨体制の全体的動きをより綿密に検討する必要がある。そのため、26年度においてもロンドンに出張し、イングランド銀行文書室、国立公文書館を中心に、実態と政策当局の認識を確認できる資料の収集を試みる。そして、25年度に刊行した著書への補完となるような論文の発表を目指す。
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Research Products
(3 results)