2012 Fiscal Year Research-status Report
ドイツ語圏を中心とするヨーロッパ広域経済圏の形成に関する歴史的研究
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24530399
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
ばん澤 歩 大阪大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (90238238)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 近代史 / ヨーロッパ経済 / 工業化 / 地域 / 国民国家 / 国際情報交換 / 多国籍 |
Research Abstract |
本研究は19世紀ドイツ語圏を中心とするヨーロッパにおける地域工業化・経済成長と国民国家の成立との関係に現代経済学に基づく観点から分析を加えるものである。研究初年度にあたる本24年度は、今後の調査作業の基盤となる史料調査と概念整理という準備作業にあてられた。 1.空間経済学を援用したアプローチによる調査分析を進めるため、数次の現地資料調査(ドイツ・ベルリン市、オーストリア・ヴィーン市、ハンガリー・ブダペスト市など)によって、19世紀ドイツ土地価格データの発掘に努め、文献資料の整理を開始するとともに、ドナウ川広域経済圏調査の端緒としてドナウ委員会事務局における調査をおこなった。また地域・空間に関する経済史的アプローチについて一定の概観・通観を行った。それらの成果の一部は、研究サーヴェイ(回顧・展望)の形で『社会経済史学会80周年記念 社会経済史の課題と展望』の1章として発表され、我が国外国経済史における空間経済学的アプローチ導入の必要を明らかにした。 2.上記の作業を進めるなかで、地域経済成長と「国民経済」成立の関連について、これまで以上に流通の側面が重視されるべきであるとともにそれらは「流通・運輸業」の産業組織面の精査・観察であるべきとの認識に達した。このため、ドイツ鉄道業の組織構成と「国民経済」「国民国家」的展開との関連について、ドイツ・ベルリン市に所蔵される公文書史料を利用した論稿を日本語ならびに英語で執筆し、それらをヨーロッパ経営史会議(経営史学会との共催。於・フランス共和国パリ市)など複数の国際学会・研究会において発表するとともに、その一部を公刊した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究初年度としての準備のうち、研究視角の整理についてはほぼ予定通りであり、本年度の作業と成果を経て内在的な問題関心の深化(流通・運輸業の業態内部にわたる組織的分析)もあった。またこの方面での成果公表については見通しがついているため、全体として順調であると言える。 中東欧・ドナウ経済圏の観察については、引き続き現地調査計画を立てるとともに、導入的報告といえるドナウ委員会の制度的概観についての準備が進んでおり、25年度中に成果公刊の見通しがある。従ってこの点でも進展は順調である。 しかし、土地価格データの収集について史料・資料の取得になお課題を残しており、現地における一層の博捜と綿密な史料調査の必要がある。 以上により、「おおむね順調に進展している」と自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には前年度の達成を踏まえ、調査を継続することにより研究を推進する。 1.ベルリン市等の各都市を中心にドイツ連邦共和国の史料所蔵機関・公的機関を訪問調査し、19世紀ドイツ語圏の土地価格資料ならびに出版物流通関連の資料を収集分析する。研究状況の進展に応じて、資料調査の地理的拡張をこころみ、ドイツ語圏内での比較研究によって分析の充実を図る。収集データの整理自体がドイツ経済史における土地・不動産史ならびに経済史・経営史的出版業分析というほぼ未踏といえる分野における貢献と評価されうると期待できるため、この段階での作業結果を逐次『大阪大学経済学』などに公表する。またドイツにおけるこの分野の研究動向をサーベイし、これらについても何らかの形での公刊をおこなう。 2.中東欧経済圏に関しては予定通りの調査対象国とともに、西欧地域も含めて比較するため、現地史料・資料調査の範囲の拡張(ジャンル・内容的なそれを含む)も試みる。また、研究に必要な史料収集の規模をドイツ、中東欧のみならず、関連する西欧諸国の公的機関にも拡張する。 3.引き続き、流通・運輸業について、技術革新や組織の効率化といった経済成長につながるファクターを重視した分析を進め、歴史分析的な「国民経済」論を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため当初の見込み額と執行額は異なったが、研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め、当初予定通りの計画を進めていく。
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Research Products
(9 results)