2013 Fiscal Year Research-status Report
ドイツ語圏を中心とするヨーロッパ広域経済圏の形成に関する歴史的研究
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24530399
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
ばん澤 歩 大阪大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (90238238)
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Keywords | 鉄道業 / ドイツ史 / 組織 / 工業化 / 地域 / 国民経済 |
Research Abstract |
本年度も前年度に引き続きドイツ語圏における短期滞在の史料調査を行う一方、イタリアにおける資料調査も実施した。これらベルリン、ヴィーン、ローマなどの公文書館・大規模図書館における調査成果は以下の研究に利用されている。本年度における成果は、考察の要素となる事例研究と並んで、本研究を社会経済史・経営史研究の国際的な動向のなかで如何に位置づけるかを把握するための研究史的分析からも成る。研究論文「国際関係の中の19世紀ドイツ企業団体;外交と産業の競争力について」ではベルリン・ダーレム公文書館所蔵のプロイセン王国鉄道史関係未公刊文書を用い、19世紀中盤からドイツ帝政期に至るプロイセン鉄道業関係者ならびに政府関係者の対外的姿勢の変化をトレースし、プロイセン政府鉄道管轄当局の最初期の柔軟な対外姿勢が次第に硬化していったことを示した。これは19世紀ドイツ外交史のケース・スタディとしての意味を持つが、同時に外交政策が産業団体などの中間組織を通じて産業の発展に看過できない質・量の影響をあたえることを示した。また研究論文「19世紀ドイツ鉄道国有化と帝国鉄道庁 : ドイツ・ライヒ鉄道統計の作成過程を中心に」では連邦公文書館(ベルリン)所蔵のドイツ帝国政府史料を利用し、帝国鉄道庁がドイツ帝国内の鉄道業の運営実態の把握の基礎となるべき鉄道統計作成において明らかな遅滞に陥った理由として帝国一円的な鉄道業管理組織の不備と表裏一体の形で存在する他官庁のセクショナリズムの弊害があげられることを実証的に示した。学会報告は日本における西洋経営史研究の半世紀にわたる歴史的展開を、我が国の研究動向に強く影響を及ぼしたはずの欧米諸国における研究動向とどのような連関があったかを中心に簡単な数量的観察により確認し、今後の本研究のひとつの指針を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現地における史料収集を続けているが、研究対象についてそれらを活用できているか否かの進度に差がある。ドイツ鉄道業に関しては研究成果を継続的に公表している。近々に研究成果の取りまとめが可能な状態となっており、今後は学界のより広範囲にそれを提示できるよう、態勢を整える形になっている。ドナウ河川広域圏については史料収集の途上にあり、まとまった形で成果を公表するに至っていない。しかし来年度以降、オリジナルな業績を提示する見込みは研究内容上はたっており、当初の予定を大きく遅れるものではない。したがって、おおむね順調に進展しているとできる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き現地での史料調査・収集を行うとともに、主に国際学会での成果発表に今以上に集中的に取り組む。 ドイツ鉄道業の19世紀における組織的発展については一定の知見を得ると同時に、その成果の発表・報告も取りまとめを考量すべき段階に入っていると考えられる。したがって今後は観察時期を20世紀にまで拡大し、総体的なドイツ鉄道経済・経営史を構築する方向に進みたい。 ドナウ河川地域を中心とした広域経済圏の経済史については、これまでに収集した史料より得られた知見を論稿にまとめ、公表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初予定した旅費の金額をわずかに下回ったが、年度末期に消耗品等の購入など適切な使用用途にあてる必要がなかったため。 消耗品等購入に充てる予定。
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