2012 Fiscal Year Research-status Report
太平洋戦争期の物資動員計画と自給圏構想に関する研究
Project/Area Number |
24530401
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
山崎 志郎 首都大学東京, 社会(科)学研究科, 教授 (10202376)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 物資動員計画 / 共栄圏 / 船舶徴用 |
Research Abstract |
太平洋戦争期の物資動員計画について、今年度は1943年度計画を中心に、計画立案の背景、立案過程、計画の実施と途中での計画の変更、そしてその実績を検討した。1943年度計画の策定に当たっては、①42年10月頃から数次にわたる海上輸送力の算定と基本計画の摺り合わせ作業を経て計画が確定したこと、②国内行政の一元化、迅速化のために年度当初に内閣機能の強化(臨時生産増強委員会、顧問会議、行政査察制度等)を図ったこと、③5大重点産業(航空機、船舶、鉄鋼、石炭、軽金属)の拡充に絞り込み、その他を大きく抑制したことなどを一次資料の分析を通して明らかにした。 また、実施段階では、43年6月になって陸海軍から42年秋に次ぐ第2次船舶増徴の要求が出たため、第2四半期以降の計画を見直し、さらに9月に大規模な第3次船舶増徴が実施された、44年2月には第4次増徴となった結果、輸送力の計画と実績が急速に低下した経緯を詳細に追った。この結果、物資動員計画の下期計画は大きく縮小し、徹底した重点化と非重点産業に対する苛酷な整理を実施せざるを得なかったことを明らかにした。 このための対策として、内地沿岸輸送では小型機帆船の国家管理と業界大再編、鉄道輸送力の最大限の利用、機帆船と陸送を密接に連結した中継輸送などあらゆる輸送方法の改善が試みられた。鉄鋼業でも良質鉱石の安定供給は不可能となったため、低品質鉱石、低操業状態への切り換え、資源立地型の小型溶鉱炉建設、民需産業設備のスクラップ化など平時では到底実現しない生産方法が試みられ、重点物資の生産維持に努めていたことなどを明らかにし、こうした事情から動員行政においても地方行政協議会や軍需省への再編措置が取られたことを指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
太平洋戦争期の物資動員計画について1942年度計画から45年度計画までを丹念に明らかにする計画を進めているが、今年度半ばまでに43年度計画の分析を一応終え、分析結果をweb上で公開した。年度の後半は44年度計画の解明を進め、その計画立案経過までのデータを分析した。 その成果は、太平洋戦争全期を通じた見通しも含めて、10月の学会報告、2月の招待講演などで公表しており、着実に研究成果を還元している。 また12月には韓国ソウル大学で開催された「太平洋戦争期の韓国経済」の2日間にわたる研究会に招待され、十数本の研究についてコメントし日韓の研究交流を深めた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究方法の基本スタイルは今年度と同様に一次資料の発掘と分析である。24年度中に存在を確認した企画院第一部を中心とした数千件の原資料について、太平洋戦争期のものを調査、複写し、今後の研究に生かす予定である。 また、近年急速に進捗している「大東亜共栄圏」関係の研究成果を吸収するため、相当数の文献を入手するとともに、本研究の研究史上の意義を鮮明にする予定である。このため、従来不十分であった日本、韓国、中国等の近現代アジア史の研究者の協力を得ながら、交流を積極的に進めることを計画している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
新発掘の総動員計画資料については、相当分量の複写を予定している。このための出張費と複写費を支出する。 25年8月に京都で予定しているアジア史研究者との研究交流に向けて、韓国人研究者との連絡を密にするため、韓国出張または韓国から日本への招聘を予定している。 近年進捗が著しいアジア近現代史研究について、過去の文献と最新の成果物を入手する。 24年度は過去に収集したデータの入力等を優先したため、予算の一部を25年度に繰り越した。その分の予算は、25年度からの本格的な資料調査に宛てる予定である。
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Research Products
(3 results)