2014 Fiscal Year Research-status Report
太平洋戦争期の物資動員計画と自給圏構想に関する研究
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24530401
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
山崎 志郎 首都大学東京, 社会(科)学研究科, 教授 (10202376)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 物資動員計画 / 大東亜共栄圏 / 海上輸送計画 / 総動員体制 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、(1)軍政と開発輸入という大東亜共栄圏構想の形成過程の解明、(2)太平洋戦争末期の1945年度物資動員計画の立案と実施過程の解明、(3)日中戦争・太平洋戦争を通じた戦時統制経済の全体像の解明の3つのテーマに取り組んだ。 (1)については、①1927年の資源局設置直後の総動員構想と日満一体の資源開発輸入体制構想が、②日中戦争勃発前後に日満支資源開発輸入体制へと拡大し、③さらに第2次欧州大戦を機に日中戦争早期終結・欧州大戦不介入という立場から東南アジアを含めた開発輸入体制を構想し、アジアにおける覇権的地位と自給圏の確立を目指したが、④独ソ開戦後の米国の強硬姿勢転換によって、南方軍事占領と資源開発という構想に帰結したことを外交資料と総動員計画資料から明らかにした。 (2)については、①小磯内閣期の大量船舶喪失によって、軍需関連生産が急減している中で、本土決戦に向けた国内資源開発計画が策定されたこと、②しかし、極度の船舶不足から不可欠な大陸資源のうち、鉄鉱、食糧、塩の3物資の最低所要量を確保することが困難となり、食糧、塩を優先せざるを得なくなって軍需関連物資の増産を放棄せざるを得なくなったこと、④空爆が拡大し、九州炭、北海道炭の本州への輸送が困難となり、国内施設の屑化、再資源化も回収、輸送ができずに鉄鋼生産が急減していくことを明らかにした。 (3)については、物資動員計画を根幹とした経済総動員体制の段階的推移について、①1939年までの競争的、②インセンティブ方式、40~42年の長期安定動員体制期、③43年以降の航空機・造船への集中と計画整合性放棄の段階に区分し、基本物資の需給、労働力需給、資金需給、輸送力需給の調整方法を特徴づけ、総動員計画の総括的全体像を提示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度までに、1942年度から1945年度までの物資動員計画の立案、実施過程を解明し、外交面から見た大東亜共栄圏構想の形成過程も解明したことで、太平洋戦争期の総動員計画の全体像を前史から終結まで提示まで提示するところまで漕ぎ着けたと考える。 補充的論点として、①中国・朝鮮・台湾など傀儡政府・植民地統治機関による資源開発政策やインフラ整備、資源開発と対日輸送の実態の解明、②南方軍政地域での統治実態、資源開発実態について、国内の諸計画と接続させて解明することで、大東亜共栄圏の縁辺領域を含めた自給圏全体の実態がよりリアルに解明されるものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は最終年度となるので、大東亜共栄圏の縁辺領域の動員実態について補足的資料調査をした上で、総括作業を行う。秋には研究成果公開促進費を申請し、翌年度中での刊行を目指す。
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Causes of Carryover |
研究成果のとりまとめ作業(原稿執筆)に予定以上の時間を要したため十分な資料調査の時間が取れなかったことと、年度末に予定していたジェトロ・アジア経済研究所等での補充的資料調査を、怪我・入院・通院の関係で年度内での実施を断念したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
補充的な資料調査を重点的に実施し、研究成果公開促進費の申請に向けて成果をとりまとめる。その際、1940年代の同時代の言説や戦後の学術研究の成果を改めて精査するため、必要な複写を依頼し、関連文献を購入をする。
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Research Products
(4 results)