2015 Fiscal Year Research-status Report
太平洋戦争期の物資動員計画と自給圏構想に関する研究
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24530401
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
山崎 志郎 首都大学東京, 社会(科)学研究科, 教授 (10202376)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 太平洋戦争 / 物資動員計画 / 海上輸送計画 / 大東亜共栄圏 / 資源外交 / 総動員計画 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題に沿った研究成果を『太平洋戦争期の物資動員計画』として公開すべく、これまで発表した論稿を体系的に整序した。その過程で、吉田裕他編『アジア・太平洋戦争辞典』の項目執筆、『歴史と地理(日本史研究)』等に戦時経済の概説を発表して、戦時統制経済の概括的理解をまとめ、上記『太平洋戦争期の物資動員計画』冒頭での研究史理解、問題視角を提示するところまでは達成できた。 本研究の目的は、太平洋戦争期の国家総動員諸計画の根幹となった物資動員計画を中心に戦略的自給圏構想とその実態を解明することであり、国際社会の分裂・対立の中で戦略資源の確保を目的に物資の供給と消費を計画化した物資動員計画の分析を通じて、概ねこの目的を達成した。 供給計画の分析では、アジア全域における資源外交や、軍事占領と統治戦略が反映されていることが判明し、消費計画の分析では日本本国と植民地・占領地域の開発と防衛構想が解明され、軍需動員計画、生産拡充計画や、資金統制計画、労務統制計画、輸送統制計画を束ねる総合戦略構想や、共栄圏構想の経済的内実やその推移を解明した。本研究ではこうした総合戦略を20世紀の資源安定開発構想のなかで俯瞰することができたと考える。特に、海上輸送計画と物資動員計画が緊密に関連して、総動員諸計画の根幹になっていること、それ故に船腹量の増減や船舶の運用形態の変更が、物資動員計画と総動員諸計画の変更に直結していることを、初めて詳細に解明し、戦時経済研究に重要な貢献をしたと考える。 なお、平成27年度内に研究成果を公刊し、日本及びアジアの戦時経済を研究する専門家との交流を予定していたが、この部分が果たせず、研究計画期間を1年の延長した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画期間中に研究成果の公刊まで予定していたが、ケガと入院など個人的事情が重なり、研究成果の最終まとめに予想以上の時間を消費した。このため、当初の研究期間を1年延長し、平成28年度中に成果をもとにした研究交流を実施することになった。平成28年度科研費研究成果公開促進費に採択されたこともあり、成果のとりまとめは順調に進むと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、研究成果を基にした研究交流が中心であり、秋に国内外の日本・アジア経済研究者を交えた研究成果の報告会を計画し、戦時期のアジア経済研究の活性化を図る予定である。
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Causes of Carryover |
ケガと入院及びその後のリハビリ等によって、研究成果の最終とりまとめ作業に十分な時間を割くことができなかった。このため、成果の公刊と成果報告のためのアジア・日本の戦時時経済研究者との研究交流の部分が次年度に繰り延べとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
公刊された研究成果を基に、年末を目途にアジアの経済史研究者を招いて国際研究交流を行う。
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Research Products
(6 results)