2013 Fiscal Year Research-status Report
ナチス戦時経済体制と原爆開発-挫折諸要因の構造連関の実証的解明―
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24530402
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
永岑 三千輝 横浜市立大学, その他の研究科, その他 (70062867)
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Keywords | ハイゼンベルク / 原爆開発 / 軍需経済 / 陸軍兵器局 / ペーネミュンデ / 原子力開発 / ハイガーロッホ / クンマースドルフ |
Research Abstract |
独ソ戦・ヨーロッパ戦争での敗退開始と日米開戦に伴う世界戦争への突入で、アメリカの工業力科学力を認識するドイツ科学界は、1942年初め、原爆開発の必要性をナチス国家指導部へ訴えた。これを受けて、軍部、軍需省でも、戦局を決定的に左右する武器としての原爆への関心は高まり、ハイゼンベルクをはじめとする物理科学界のトップリーダーたちから原爆開発の実現可能性などに関するプレゼンテーションを求めるに至った。しかし、そのプレゼンテーションが行われた42年6月段階では、その物理化学的工学的な準備状況は端緒的段階にあった。 まさに総力戦突入の1942年のドイツ戦時経済下で、数年先に実現可能な大々的な開発プロジェクトを開始するには、科学者の側に十分な準備と人的資源の余裕がなかっただけではなく、軍需経済上も目下進行中の独ソ戦の短期的勝利に全資源を投入せざるを得ない状況となっていたため、余裕がなくなっていた。 こうした総力戦段階の実態を実証的に検証するため、原爆開発と同時並行的に進められ、実践的武器が開発され実践に投入さたロケット開発との比較が必要であり、これに関して、バルト海沿岸の町のペーネミュンデ歴史博物館で現地調査を行い、さらに、ベルリン近郊の陸軍兵器局実験場、および、ヘヒンゲン(ハイガーロッホ)の原子力開発プロジェクトの現場を調査した。そして、フライブルク軍事文書館において、陸軍兵器局の関連一次史料を探索し、収集することが出来た。 そうしたドイツ文書館・歴史博物館での調査を踏まえながら、「1942年ドイツ軍需経済の課題とシュペーア―ナチス原爆開発挫折の要因分析のために―」をまとめ上げ、公刊できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2月から3月に予定していた文書館調査の日程が充分にとれなくて、ミュンヘンのドイツ博物館の文書史料の探索が少し予定より遅れているが、おおむね、史料調査・現地調査・文書の発掘等は順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
ドイツ博物館(ミュンヘン)の文書館での史料調査の調査を継続するとともに、新しい武器の開発としては実戦投入されたロケット開発(VI,VII)の実態を検証する作業を行い、限られた人的物的資源状況で、さらに、総力戦敗退過程で連合国の軍事的圧力の急激な増大の中で、原爆開発、その前提となる原子力開発にはきわめてわずかの人的物的資源しか投入されえなかった実態を検証する。 そのために、フライブルク軍事文書館、ベルリンの連邦文書館での史料探索を行うとともに、中部ドイツのロケット製造地下施設(その歴史博物館)の現地調査も行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2月-3月の春休みに予定していたドイツの文書館での調査が、科研費のために使用している研究室のある研究棟の耐震構造強化工事にともなう全面的引っ越し作業が入ることによって、予定の調査文書館・期間・日程を圧縮ないし短縮せざるを得ず、それに伴い旅費および史料費等を次年度回しとせざるを得なかった。 夏休み期間中に予定している長期の現地調査・文書館調査のために、上記の理由で使い残さざるを得なかった助成金を有効に活用したい。特に、最終年度の予算額が少ないので、昨年度の使い残しの資金は、研究遂行上、貴重となる。
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Research Products
(5 results)