2012 Fiscal Year Research-status Report
日本のエネルギー政策思想についての国際歴史共同研究
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24530408
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
池尾 愛子 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (70176080)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際研究者交流 / 国際情報交換 / 韓国 / 中国 / アメリカ / 石油 / 石炭 / 原子力 |
Research Abstract |
日本経済思想史学会(2012年6月の全国大会において「日本経済思想史研究会」より名称変更)後援のもと、「日本経済史セミナー」を早稲田大学において立ち上げ、内外の4人の研究者に本テーマに直接・間接に関連しそうな研究を発表していただいた。日韓関係が緊張をはらむ中、10月に連携研究者の林采成氏(韓国ソウル国立大学准教授)に訪日・ご発表いただけ、安堵した。 中国人の連携研究者の尹暁亮氏(南開大学副教授)には、日中の緊張が高まる中、中国国家教育部と日本学術振興会との協力により、12月に3週間の訪問が実現した。尹氏には、中国外での研究発表の経験がなかったため、日本経済思想史学会例会において研究発表の経験を積み、懇親会において参加者との交流を深めていただいた。また、日本で研究資料を収集され、日本のエネルギー史の専門家である橘川武郎氏(一橋大学教授)らとの会合をもたれていた。例会やセミナーの開催案内は、日本経済思想史学会、H-Japan、経済学史学会等のメーリングリストに配信した。 アメリカのハーバード大学・マサチューセッツ工科大学(MIT)の歴史学部・経済学部の共同研究プロジェクトが「アジアと新エネルギー史」(種蒔き・萌芽プロジェクト)をテーマとする国際ワークショップを2月21-22日に開催した。池尾は校務のためワークショップには出席できなかったが、3月中旬にハーバードを訪問して、プロジェクト・メンバーと情報・意見交換を行うほか、デューク大学でも経済学史とエネルギー史について意見交換を行った。その際に作成した英文資料は、2013年6月の日本経済思想史学会年次大会における国際シンポジウム「日本のエネルギー政策思想:内外の視点から」を組織するためにも利用し、研究ウェブサイトに掲載した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2012年中、エネルギー政策思想を中心テーマにして、「日本経済史セミナー」(早稲田大学)を4回開催した。第1回は5月26日のリチャード・スメサースト氏(米ピッツバーグ大学名誉教授)の「1930年代日本のエネルギー政策思想と意思決定」、第2回は7月28日の荒川憲一氏(防衛大学校教授)の「日本海軍の石油自給政策(1919-1945年)」、第3回は9月7日の李相佰氏(米カリフォルニア大学バークレイ校・早稲田大学商学研究科交換留学生)の「固定相場制から変動相場制へ:日本の政治家・官僚・経済学者・経済界の対応を中心に」(石油ショックの時期と重なり、オイル・マネーの動向が注目される)、第4回は10月27日の連携研究者の林采成氏(韓国ソウル国立大学准教授)の「植民地台湾における鉄道業の展開とその特徴:推計と実態」。日本経済思想史学会の12月15日例会において、連携研究者の尹暁亮氏(中国・南開大学副教授)の「中日原子力発展モデルの比較に向けて」の発表を得た。 林氏と尹氏には早稲田大学に短期滞在していただき、研究情報を交換し、池尾司会のもとでの研究発表の経験を積んでいただき、2013年6月の日本経済思想史学会全国大会でのシンポジウム発表に向けて準備を進めることができた。尹氏は中国語等で活発に研究を発表されている様子である。また、林氏、尹氏のほか、スメサースト氏と荒川氏も、成果公表のための論文集への寄稿を予定している。 3月にハーバード大学を訪問することによって、同大とMITの歴史学・経済学共同プロジェクトの様子、その一環のプロジェクトである「アジアと新しいエネルギー史」と同テーマでの国際ワークショップの状況がよくわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2013年6月8-9日の浜松の静岡文化芸術大学での日本経済思想史学会年次大会において、国際シンポジウムを組織する。テーマは、「日本のエネルギー政策思想:内外の視点から」で、構成は次の通り。パネル1として、組織者の池尾が、「中長期経済予測、技術進歩とエネルギー政策」を報告する。パネル2は、林采成氏(ソウル国立大学 日本研究所 准教授)で、「日本の石炭産業と輸送問題-戦時・戦後復興期を中心として-」を発表する。パネル3は、尹暁亮氏(南開大学 日本研究院 准教授)で、「中日原子力発展モデルとガバナンスの比較」を発表する。予定討論者は、牧野邦昭氏(摂南大学 経済学部 専任講師)と高橋周氏(東京海洋大学 海洋科学系 准教授)である。池尾以外は、中堅・若手の気鋭の研究者たちでシンポジウムを組織する予定である。 大会プログラムの英語版が出来次第、H-Japan 等のリストに配信し、広く参加を募る。荒川憲一氏は大会への参加を既に表明してくれており、シンポジウムを充実させてゆく。東京や浜松で、海外連携研究者達と交流・情報交換を行い、エネルギー政策思想について更なる研究の芽を出すべく、種まきをしていく。「日本経済史セミナー」(早稲田大学)も開催し続ける。 ボストンのハーバード大学・MITの歴史学・経済学共同プロジェクトの一環である「アジアと新しいエネルギー史」のメンバー・関係者達、アメリカの経済学史家達とも連絡を取り、研究の可能性を膨らませていく。日本経済思想史学会メンバーに、ボストン・プロジェクトの情報を提供し、エネルギー問題や、燃料・動力問題に注目するように働きかけ、アメリカ・ボストンにおいて進められているプロジェクトへの関心を醸成し、更なる国際交流の機会を窺う心づもりである。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費の使用計画は次の通り。2013年6月8-9日の浜松での日本経済思想史学会年次大会における国際シンポジウムを準備し、組織する。海外連携研究者の「日本のエネルギー政策や歴史」の研究をサポートし、彼らの大会参加費、旅費、宿泊費を確保する。大会シンポジウム時に蒔いた種を発芽させ、育てるべく、「日本経済史セミナー」(早稲田大学、日本経済思想史学会後援)において、「日本のエネルギー政策思想・歴史」に関連するテーマでの研究発表の機会を設ける。日本語の研究論文については英語版を作成していただき、非英語母語話者が書いた英語はブラッシュアップし、英語版の研究論文は日本語版も作成する。 研究費はアメリカ訪問にも利用する。アメリカを訪問して、ハーバード大学・MITにおいて「アジアと新しいエネルギー史」のメンバー・関係者達と連絡を取り、デューク大学等では、経済学史とエネルギー史の交流の道を探る。さらに、ハーバード大学の若手研究者 Victor Seow 氏の準備が整えば、訪日の手助けをする。次年度間に合わなければ、次々年度の招待を視野に入れる。
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Research Products
(9 results)