2013 Fiscal Year Research-status Report
クロスボーダーM&Aにおける日本企業の行動と経済性の国際比較分析
Project/Area Number |
24530422
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
井上 光太郎 東京工業大学, 社会理工学研究科, 教授 (90381904)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 一功 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (40338653)
加藤 英明 名古屋大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (80177435)
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Keywords | クロスボーダーM&A / コーポレートガバナンス / 株式市場 / イベントスタディ / 企業文化 |
Research Abstract |
本研究プロジェクトの2年目にあたる平成25年度は、前年度に引き続き下記の3本の研究論文の改善のための追加分析と修正を進めた。第1に、日本企業のクロスボーダーM&Aのイベントスタディを行っているIngs and Inoueについては、国際学会等でのコメントを踏まえて論文を修正のうえ、投稿準備を進めている。 第2に、日本企業のM&Aの長期的パフォーマンスと、コーポレートガバナンスの関連について検証したInoue, Yamasaki and Naraは、分析の結果、同業種企業の買収および相手企業の経営権を完全に取得するM&Aにおいて、パフォーマンスが相対的に良好であることを確認した。また、社外取締役が存在する買い手企業によるM&Aの方が、買収3年後の収益性が良好だった。本研究は、日本ファイナンス学会平成25年度大会で報告し、そこでの指摘点を改善し、RIETIのDiscussion Paper (DP13E-085)に登録した。 第3の、アジアおよび欧米の主要先進国の企業間のクロスボーダーM&Aの国際比較分析を行っているBremer, Hoshi, Inoue and Suzukiは、各国の法の起源や経済発展段階を考慮しても、不確実性回避傾向の強い企業文化をもつ国の企業は、クロスボーダーM&Aに消極的だが、海外M&Aを実施する場合は高い買収価格を提示して、確実に取引を実現しようとする傾向を持つことを発見した。日本ファイナンス学会平成25年度大会での報告を経て、現在は平成26年5月に予定されている国際学会での報告の準備を進めている。 また、経営者の自信とその企業の投資行動の関連に関するサーベイ調査をベースにした研究を進めた。 なお、研究全体で得られた知見についてまとめたものを、平成25年日本経営財務研究学会の統一論題セッションで報告(招待講演)した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、前年度に分析し、ドラフト作成した3本の論文について、学会報告等でのコメントを踏まえ、データの追加、分析の精緻化、ドラフトの修正を進めた。3本の研究については日本の国内学会での報告を経て、修正のうえで国際学会(査読付き)での報告につなげており、投稿準備に入っている点で概ね順調に進展しているを言える。日本のM&Aに関して株価のイベントスタディを行ったIngs and Inoueについては、投稿準備中である。日本企業のM&Aの長期パフォーマンスを分析しているInoue, Nara and Yamasakiについては、分析は概ね目処はついているが、論文本文の修正を課題としている。Bremer, Hoshi, Inoue, and Suzukiについては、分析結果に新規性があるが、その解釈等で課題を残しており、今後の学会等での討論を踏まえての議論の明確化が課題となっている。 一方で、本年度より計画していた、日本企業のM&A行動が相対的に消極的である点に着目し、主要先進国間の株主構造、経営者構成等の差異とM&A行動との関連性を分析する国際比較研究については、サンプルおよびデータ収集に時間を要し、分析開始までは至っていない。本研究については、平成26年度前半までにデータ等をまとめ、同年度後半には仮説の明確化とそれに基づく分析の開始により、予備的な結果を得ることを計画している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は本プロジェクトの最終年度に当たるため、研究作業の中心として日本企業のクロスボーダーM&Aに関する実証研究であるIngs and InoueおよびInoue, Nara and Yamasaki、アジアおよび主要欧米諸国を対象にしたBremer, Hoshi, Inoue and Suzukiの計3本の実証研究については、分析の精緻化、論文ドラフトの改善を図り、順次、専門誌への投稿を進める。 また、中国のクロスボーダーM&Aに関する実証研究であるInoue, Chen, Zhu, Yan and Songについては、学会報告等でサンプル数の不足を課題とされており、分析内容の充実を図り、国際学会等での再報告に向けて準備することを予定している。 主要先進国間の株主構造、経営者構成等の差異とM&A行動との関連性を分析する国際比較研究については、次年度前半までにデータ等をまとめ、次年度後半には予備的な分析を進めることを計画している。本研究については、年度内には学会報告に投稿できる状態まで分析、ドラフトの作成を行うことを計画している。 また、経営者の自信とその企業の投資行動に関するサーベイ調査に基づく研究を進めており、これを発展さで経営者の自信とその企業のM&A行動に絞った分析を進めることを計画している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は予定していた国際学会での報告を業務上キャンセルしたことにより未使用額が発生した。平成26年度は研究計画最終年度であり、実施中の研究プロジェクトの分析の精緻化のためのアルバイトの雇用、国際学会報告、英文チェック、投稿費用などが見込まれ、全額を次年度に使用することに決定した。 次年度使用額については、国際学会報告に主として充当する計画である。
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