2013 Fiscal Year Research-status Report
マルチステイクホルダー学習システムによるリサイクル活動の生成と移転メカニズム
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24530429
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
佐々木 利廣 京都産業大学, 経営学部, 教授 (80140078)
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Keywords | 組織間協働 / ソーシャルビジネス / マルチステイクホルダー / スケールアウト |
Research Abstract |
昨年度に続き、企業とNPOと行政のマルチステイクホルダー協働によるソーシャルビジネスが他国あるいは他地域に横展開する過程について調査を行った。25年度には具体的ケースとして、ドイツで生まれた視覚障がい者の社会参加をめざすダイアログ・イン・ザ・ダークがどのような過程で日本に移転し定着してきたのかについて調査を行った。 さらに大分県別府で生まれたオンパクが函館の湯の川温泉や岡山の吉備工房ちみちに移転された後の経過について調査を行った。この2つの地域の移転後の経過は全く異なるものであった。すなわち吉備工房ちみちのモデルは震災被災地をはじめ多くの地域に拡大移転しているのに対して、函館の湯の川温泉ではオンパクモデルは定着せずに10年間の活動の末に休止に追い込まれている。こうした差はどこから生じるのかについて関係者に聞き取り調査を行った。 また広域レベルで多くのマルチステイクホルダーが一体になって地域課題を解決する取組が進んでいる現状を背景に、しまなみ海道で結ばれた尾道地域と今治地域で活動している企業やNPOや行政がしまなみコットンロードなどの共同プロジェクトを推進しようとしている現状について調査を行った。具体的には、NPO法人工房おのみち帆布、尾道帆布株式会社、オーキッド向島、織鶴タオルの代表者にインタビュー調査を行った。こうしたソーシャルビジネスの生成・移転過程を通じて、ビジネスモデルの学習可能性や拡張可能性はどこから生まれるかについて理論的考察を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
企業とNPOと行政の3つのセクターが社会的課題の解決のために協働することで社会イノベーションを生み出すメカニズムのなかで特に重要視した協働システムの移転・浸透過程について興味あるケースの発掘と当事者への聞き取り調査による興味ある事実発見ができたことから所期の目的はおおむね達成しつつある。この結果をもとに26年度の最終年度には引き続きより地域を拡大しながら調査を進めていく計画である。
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Strategy for Future Research Activity |
ソーシャルビジネスのスケールアウト過程を考えるうえで興味深い現象として、ある地域で生まれたビジネスモデルが別の地域に移転し、そこで新たなモデルに進化した後さらに別の地位に移転するというサイクルがみられることである。こうした組織間の学習サイクルをどのように理論化するべきかについてはまだ予備的考察の段階である。いくつかの事例と組織間学習論をもとに最終年度にはひとつの結論を導き出したいと考えている。
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