2014 Fiscal Year Research-status Report
産業集積地再生におけるセクター連結型企業家―陶磁器産地有田の事例研究―
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24530438
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
山田 雄久 近畿大学, 経営学部, 教授 (10243148)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
市川 文彦 関西学院大学, 経済学部, 教授 (00203092)
東郷 寛 近畿大学, 経営学部, 准教授 (10469249)
吉田 忠彦 近畿大学, 経営学部, 教授 (20210700)
山本 長次 佐賀大学, 経済学部, 教授 (70264140)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 産業集積 / 同業者団体 / 企業家 / 非営利組織 / 陶磁器業 / 伝統産業 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では佐賀県有田町における有田焼産地を中心とするまちづくりの現況について検証し、産業集積地における企業家の役割に関する歴史的分析を行う事を目的としている。本年度では2016年度に実施予定である日本磁器誕生・有田焼創業400年事業の準備過程について詳細に実地調査を行い、有田町役場を中心とする400年事業の具体的プランについて現地でのヒアリング調査を実施した。 伝統産業地における地域再生に関しては現在の日本経済においても喫緊の課題となっており、伝統産業そのものの崩壊に直面している産地も少なからず存在する。日本の陶磁器業においても同様の事態に直面し、和食器産地として重要視されている有田焼産地の近年における取り組みに関しては世界からも注目される現状にある。有田町のまちづくりとも関連して産業衰退期における再生をかけた事業の実施と、それらの地域再生における企業家の役割について分析を加え、有田町長ならびに有田商工会議所会頭の両者による企業家活動に着目し興味深い動向をモニタニングすることに成功した。 有田商工会議所を中心とするまちづくり会社の設立と観光地化による地域再生の試みが、今後の伝統産業地域の活性化に少なからざる影響を及ぼす現状をふまえ、それらの動きを主導する陶磁器企業の人材創出と、地域のリーダーである企業経営者の動向に関して、貴重な情報を得ることができたものと考える。これらの企業者活動に関するデータ収集、ならびにフィールドワークを通じてマルチセクターパートナーシップの現代的役割について統括し、次年度以降に成果報告書として取りまとめる形で、現地の有識者を中心に提言を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究開始後3年目となる本年度には、とりわけ今回の研究対象となる有田焼創業400年との比較検討を実施する上で重要な作業となる有田焼創業350年事業に関する情報収集を実施し、それらの活動を経て50年を経過した現在の陶磁器産地の衰退要因との関連性について検討を試みた。50年前の記念事業においては有田町長と有田商工会議所会頭との連携による地域インフラの整備と産業集積地における伝統産業支援事業の実施、マルチセクターパートナーシップを発揮する企業家の影響力と、産地構造の高度化をもたらす各種事業の実施に関して数々の歴史的事実が着目され、今現在ではモデル分析が可能な状態にある。 昨年度における非営利法人研究学会での報告に続き、本年度には欧州経営学会における企業者活動に関するワークショップで研究報告を行い、有田焼産地における企業者活動と地域ネットワークとの関連性について制度的分析を試み、貴重なコメントを頂戴した。同時に有田焼の業界組織として誕生した大有田焼振興協同組合の経営史料の発掘に成功し、昨年度に引き続いて1990年代における有田焼業界の革新的動向に関する分析を加え、現代の伝統産業地域における問題点と、新たな産地戦略の策定に向けた動きに関する具体的な事実が浮かび上がりつつある。 上記の資料調査とヒアリングを通じた情報収集に基づき、同業者団体による産地業者の情報伝達とコンセンサスの形成、産地組織としての行動様式の形成プロセスに関する分析作業を実施し、現在の産業集積地におけるNPO法人の役割と、有田観光協会などの行政関連団体の活動に対する評価、さらには陶磁器業の企業経営者によるマルチセクターパートナーシップの動向に関して解明できる現状にあると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までに、同一の人物および企業を含めて80回に及ぶヒアリングを実施し、これらの音声データを用いて現在の陶磁器産地における企業家データベースを作成して研究成果の取りまとめを行う事が次年度の中心的な作業である。大有田焼振興協同組合に関する資料については大学紀要で本年度までに4本発表し、次年度の資料論文を含めて5本を公表する事で、マルチセクターパートナーシップの動きと現状に関する学術研究に資することを目指したい。 とりわけ50年前に及ぶ陶磁器産地の業界リーダーならびに企業家の証言は、今後の伝統産業における企業者活動の重要性とその役割に関して知りうる貴重なデータとなる事は間違いなく、地元での現状の問題に対する提言を行うと同時に、研究書として取りまとめる形で伝統産業地域における企業者活動の役割と現在の産業集積地における経営課題を明らかにする上でも重要な作業となりうるものと考えるものである。 本年度を中心として、2年後に実施される有田焼創業400年事業に向けた有田町の取り組み、さらには海外への事業展開を目的にサポートする佐賀県の行政的な支援に関する情報収集にも成果を収めたが、次年度以降にこれらの現状が大きく変化する事も予想され、引き続き次年度の変化をモニタリングする事で陶磁器産地の発展がいかにして可能であるのかを検討すると同時に、企業家のマルチセクターパートナーシップを通じた地域における多面的な活動とその波及効果に関して、さらなる実地調査により検証する事が求められる。研究分担者との役割分担を一層明確化し、共同研究作業の成果発表を行うべく議論を重ね、研究成果報告書の刊行と陶磁器業を中心とする伝統産業の集積地再生に向けた視座の提供を図るべく研究活動の深化を図っていく。
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Causes of Carryover |
本年度にはヒアリング調査を早期に完了することができ、結果的に出張旅費の節約、研究成果の取りまとめに用いる資金の追加確保が可能となった。一方で、本年度において結果的に研究分担者の海外出張が重なり、共同研究の成果を取りまとめるための検討会を実施できなかった。今年度海外出張で時間が取れなかった研究分担者については次年度の海外出張の予定がなく、最終年度として研究成果を取りまとめるための打ち合わせを行う予定である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度に実施を予定していた共同研究の成果報告検討会については次年度に実施する事とし、研究分担者との早めの研究成果の打ち合わせと、最終的な研究成果報告書の作成作業に向けた共同作業を実施し、本年度の繰越分を次年度の研究分担者の出張旅費に充当したい。
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Research Products
(4 results)