2012 Fiscal Year Research-status Report
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24530443
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kawaguchi Junior College |
Principal Investigator |
平澤 純子 川口短期大学, その他部局等, 准教授 (50517224)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 雇用調整 / 整理解雇 / リーダーシップ |
Research Abstract |
本研究は、資本主義経済において皆無にすることができず、かつ、労使の利害が厳しく対立する整理解雇に起因する紛争に伴う労使の損失を、できるだけ最小限に食い止めるために、経営学は何をなしうるかという問題意識の下に、整理解雇を取り上げて、企業内部における紛争解決のリーダーシップのあり方を考察することを目的としている。具体的には、①整理解雇をめぐる経営者職能、②整理解雇紛争を終息させる従業員のリーダー像を明らかにし、③以上2点から明らかになる役割を担いうる人材の供給・養成システムを考察することを課題としている。 平成24年度の目標とその達成度は、下記の「現在の達成度」で述べるとおりであるが、先行研究のレビューから、本研究のような問題意識に基づく研究がこれまでいかになされてこなかったかが、明らかになった。国際学会での発表に対しては、さまざまな質問・助言だけでなく、英文雑誌への投稿の機会や、国際共同研究への参加の機会を与えられた。国際共同研究に参加したことで、日本人による研究でおろそかにされがちな、研究パラダイムを明確にするための考察をすることができたことは、本研究の質を高め、射程範囲を明確することにつながった。 これまで、本研究に対しては、国内外の研究者や、紛争処理機関の実務家から関心を寄せられたが、最近では、これから雇用調整をしなければならないという、ある企業の人事担当者から、研究の知見を教えてほしいという依頼を受けた。その人事担当者は、雇用調整による紛争を回避するにはどうしたらよいのか、いろいろと調べているうちに私の雇用調整に関する論文を知ったという。このことは、本研究が一般の企業の方々からみても必要性があることを示している。こうした要請にこたえられる研究をしたいと思う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の初年度にあたる、平成24年度の目標は、二つあった。そこで、目標別に達成度を見ることにしたい。 今年度の第1の目標は、先行研究の知見を整理することだった。ただし、本研究と同じ目的で行われた先行研究はなかったため、これまで研究代表者が単独・共同で実施してきた研究の知見を整理することに主眼を置いた。ネパール経営学会(ネパール) 東アジア経営学会(中国、河海大学商学院)での報告という形で成果の一部を発表した。 今年度の第二の目標は、本研究の精度を左右する、分析枠組みに関する検討をすることだった。研究者が研究テーマを選び、これを追究するときの態度として、方法の適用を究めようとする態度(方法適用型)と、具体的・実践的要求に応えようとする態度(問題追究型)とがある。本研究は後者の問題追究型であると言える。問題追究型の研究を行う際、問題の解明のためにあらゆる知識や方法が動員されることで、記述の蓄積、あるいはディレッタンティズムの方向へ流れやすい。こうした危険性を回避するために、今後の研究の分析の枠組みを精査することを第二の目標とした。拙稿"Socio-Cultural Integration ando Innovation in Globalization"(査読有)は、第二の目標のために行った作業の成果の一部である。 以上のように、平成24年度の目標にそった研究を実施し、成果を論文、学会発表で発表することができた。さらに、国際的な学会での発表を通して、他国の研究者から助言とともに、国際共同研究への参加の機会を与えられた。国際共同研究を通して、そもそも本研究がどのようなパラダイムに立つのかを明確にし、いかなる方法で進めるべきか、考察する機会を与えられた。その成果は論文としてまとめ、すでに脱稿した。この論文は国際共同研究による共著として、平成25年度中に発行される。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、①雇用調整をめぐる経営者職能に関する文献研究を行い、論文や学会発表等の研究成果を出しつつ、②解雇紛争の当事者、関係者に対する聞き取り調査、整理解雇をめぐる裁判の訴訟記録閲覧といった方法で得た知見をもとに、研究成果をまとめていく。 上記②は、調査対象者から、調査に協力すること自体の合意を取り付けてあるものの、相手の都合に合わせて進めなければならない。そこで、②による研究成果の発表は流動的にならざるを得ない。①の文献研究で確実に研究成果を発表していくことが肝要であると認識している。 平成26年度は、平成25年度の研究成果の知見を整理し、平成25年度の調査で分からなかったことを明らかにするための追加の調査を行うだろう。同時に、本研究の最終年度(H27年度)に向けて、平成24年度に行った分析枠組みの研究や、本研究の知的ストーリーを見直す作業に取り組むことになるだろう。 最終年度である平成27年度は、平成26年度に精錬した分析枠組み、知的ストーリーの下に研究成果をまとめる。経営学の研究の発展だけでなく、実際の雇用調整に直面した労使に寄与しうる研究を目指すことで、本研究を採択していただいたことに報いたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用の研究費が生じた要因は、購入した物品(パソコン)の支出が、研究費を計上していたときの見積額よりも大幅に抑えられたためである。研究成果発表は、当初の目標を達成している。
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