2012 Fiscal Year Research-status Report
曖昧で突発的な仕事状況に置かれた従業員のストレス並びにその軽減についての解明
Project/Area Number |
24530448
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
岩田 一哲 弘前大学, 人文学部, 准教授 (70345859)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河野 良治 長野大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (30350424)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 人的資源管理 / ストレス / 曖昧で突発的な職務 |
Research Abstract |
平成24年度は、研究目的における研究期間内に明らかにする点の第1番目である、曖昧で突発的な仕事に就いたという出来事が、ストレスの原因となる要因をいかに増大させているのか、さらに、その仕事がどの程度ストレスを増大させたかを明らかにすることを主眼とした。具体的には、アンケート調査によって、仕事の量的・質的負荷等のストレスの原因、媒介要因としての仕事上の出来事やコンピテンシー、ストレスの結果としてのうつ反応や身体的反応という3者関係を、定量的な側面から把握するためのアンケート調査項目・尺度を確定することを目的とした。具体的な実績は以下のとおりである。 1.過労自殺研究とストレス研究の関係の検討 過労自殺研究では、終身雇用慣行・年功序列制度を中心とした日本的雇用慣行との関係や、日本人独自のパーソナリティに関する要因、仕事そのものに関する要因等の多くの要因が過労自殺に関係すると指摘されている。これらの要因をストレス研究と対応させ、ストレス研究の枠組みを用いて検討した。ストレス研究はアンケート調査での実績が豊富であるため、アンケート調査がほとんどない過労自殺研究へ応用することで、過労自殺の先行要因を探った。結果として、「過労自殺研究からみたストレスモデル」を新たに作成し、アンケート調査の分析枠組みとした。 2.出来事とストレスの関係 この領域では、イベント型ストレッサという研究分野があり、この分野の研究業績を概観した。結論として、厚生労働省が平成23年12月に改訂した「心理的負荷による精神障害の認定基準」をもとに、出来事に関する変数を作成した。イベント型ストレッサはストレス研究で検討されており、実証的にも妥当性は高い。ただし、過労自殺研究に直接接近したものではない。したがって、「心理的負荷による精神障害の認定基準」を直接用いることで、過労自殺とストレスの関係に直接接近する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの達成度としては、②おおむね順調に進展している と考えている。理由は以下のとおりである。 研究実績の概要1.については、中間管理職のストレスと過労自殺の関係を検討した論文を査読論文として投稿し、現在修正中である。この論文では、「過労自殺研究からみたストレスモデル」を新たに作成したことに特徴があり、このモデルに則れば、アンケート調査に応用可能である。さらに、過去に行った調査をこのモデルで解釈している。また、この論文は査読論文に投稿し修正中であるが、査読者からは、このモデル自体の問題を指摘されてはいない。したがって、来年度以降のアンケート調査にもこのモデルを援用する。 研究実績の概要2.については、ストレス研究と過労自殺研究の変数間の関係を理論的に検討した論文を執筆中であり、今年度前半には本学紀要に公刊する予定である。この論文では、前述のストレスモデル全体に関する議論だけでなく、出来事とストレス、さらに結果としての過労自殺との関係も検討している。 さらに、来年度にアンケート調査が予定されている、曖昧で突発的な仕事に対処しうる能力の開発についても、日本会計研究学会第82回東北部会において、組織間学習という、自分が所属する企業とは異なる企業や団体などの人々と共に学習することの重要性と、そのための能力に関する報告を行った。これによって、曖昧で突発的な仕事に対処する能力として、組織間学習ができる能力を加えることの重要性が把握できた。 以上3点から、本年度に行うアンケート調査に向けて、調査に援用可能なモデルならびに質問項目が完成していることから、おおむね順調に進展していると位置付けた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、以下の2点を主眼に検討する。 1.Webによるアンケート調査 研究目的における研究期間内に明らかにする点の第1番目である、曖昧で突発的な仕事に就いたという出来事が、ストレスの原因となる要因をいかに増大させているのか、さらに、その仕事がどの程度ストレスを増大させたかを明らかにするために行う。この分析は、4月~9月に行うことを計画している。既にアンケート調査項目は完成しつつあるため、共同研究者の河野良治先生ならびにWeb調査会社と実際の調査に関する打ち合わせを経て、実際の調査・分析を行う。具体的な分析方法は、因子分析、判別分析、回帰分析・共分散構造分析を用いるため、SPSSならびにAmosを用いる。SPSS、Amosの操作方法については、昨年度で習得済みであるため、調査結果が提示されてからすぐに分析に入ることができる。 2.インタビュー調査 この調査は、この調査は、研究目的における研究期間内に明らかにする点の第2番目である、曖昧で突発的な仕事に対処しうる能力の開発に関する調査での予備調査として位置づけている。期間は10月~3月を計画している。具体的には、曖昧で突発的な仕事に直面し、その仕事を行った人々へのインタビュー調査から、その仕事を行う際に気をつけたことや、その時に本人がどのような考えで行動したかを聞き取る。聞き取った内容をテキストマイニングという手法で分析し、共通項目を抽出した上で、曖昧で突発的な仕事に対処できる能力を提示することを目的とする。テキストマイニングについては、本年度テキストマイニングソフトを購入する。ソフト購入にあたっては、講習会等で操作方法を習得しており、調査後すぐに分析が可能である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし。
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Research Products
(4 results)