2013 Fiscal Year Research-status Report
中国における対日オフショアリング事業の発展を支えるブリッジ能力・融合能力の研究
Project/Area Number |
24530449
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
川端 望 東北大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (20244650)
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Keywords | オフショアリング / ソフトウェア産業 / 情報サービス産業 / 大連 / 中国 / ブリッジ能力 / 産業高度化 |
Research Abstract |
2013(平成25)年度は,まず前年度末に印刷中であった査読付き論文「大連市におけるソフトウェア企業の事業創造と変革」が『産業学会研究年報』に公表された。論文別刷りを作成して関連研究者や企業に献呈し,意見交換を行った。 今年度のもっとも重要な活動は,延期されていた中国調査の実施であった。2013年8月19日から29日までの11日間にわたり,研究協力者の張艶氏,谷口惠氏の助力を得ながら,大連市においてオフショア・サービスを手がけるソフトウェア・ITサービス企業,ソフトウェアパーク,政府系研究機関,業界団体を訪問し,オフショアリングの実態調査を行った。この調査により,急速に進む円安が対日オフショアリングに困難をもたらしており,大連のソフトウェア・情報サービス産業が従来にも増して転換を迫られていることが明らかになった。 また実務者を交えた研究会を重視した。2013年8月には大連ITクラブ,10月には大連ITクラブ東京で講演を行い,2014年2月には,研究協力者の谷口惠氏を招へいして,仙台でセミナーを開催し,大連の産業発展から引き出せる教訓を明らかにした。これらのセミナーでは数多くの研究者,実務家,政策担当者と意見交換し,実践的観点を踏まえてオフショアリング・ビジネスの現状と課題,今後の可能性について検討できた。 以上の活動により,大連市におけるソフトウェア・情報サービス産業の高度化の複数のパターンが解明されつつある。そして,その中でオフショアリングのためのブリッジ能力を基礎とした融合能力が形成され,積極的役割を果たしている傾向と,ブリッジ能力がむしろ撤退障壁として市場と事業の転換を阻む傾向とが,ともに作用していることが明らかになりつつある。2014年度の課題は,これらを主要な論点とする最終的な研究成果のとりまとめである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
中国・大連市におけるオフショアリングの実態調査については,2012年度に生じた遅れを取り戻し,計画通りの進捗に復帰した。調査記録の作成と解析についても順調に進行した。学会報告については,アカデミー内での討論よりも実務家との討論を重視したために学会以外の場での報告に予定を変更したが,それによって,次に記すワークショップを含めた3回にわたる実務家との討論の機会を得て産業高度化のパターンについての認識を深めることができた。作成した論文の実務者へのフィードバックは,予定以上に進められた。研究協力者を招いての国際ワークショップは,構想どおりに開催できた。論文の作成については,着手したところであり,2014年度中に投稿できる見通しである。 以上を総合すると,おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
2014(平成26)年度の最大の課題は論文の完成と投稿,査読の通過による採択である。そのための必要に応じて,補足調査,最新の資料・統計の入手によるデータのアップデート,学会または研究会での報告も進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
購入を計画していた民間調査機関による情報サービス産業データ集が,より安価な資料で代替できたこと,セミナーのために研究協力者を招へいする旅費が予定よりも安価になったことによる。 国内および中国での補足調査の旅費として使用する。
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