2015 Fiscal Year Annual Research Report
価値づくりの技術経営:意味的価値と組織能力の理論・実証研究
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24530453
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
延岡 健太郎 一橋大学, 大学院商学研究科, 教授 (90263409)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 価値づくり / 意味的価値 / デザイン価値 / アート思考 / 顧客価値 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は模倣されない価値づくりを実現するために、機能的価値と意味的価値からなるフレームワークを理論的に深堀し、かつ、価値づくり成果を決定する要因を検証し、そのための戦略と組織のあり方を明らかにすることである。 平成27年度では、理論的な枠組みとしては、意味的価値の概念をさらに発展させることができた。生産財に関しては、顧客の利益を高めることこそが、意味的価値の最重要点であることを議論し、消費財ではこれまで議論してきた「デザイン価値」に加えて「アート思考」の理論を展開した。また、平成27年度は、本研究の成果の全体像を議論するための論文として「ものづくりと価値づくり」を出版し、価値づくりの条件として、「擦り合わせ型商品+意味的価値」の両特性を持つことを明確にした。 これまで、研究期間全体を通じて、生産財の意味的価値の議論をサポートする定性的実証研究として、キーエンスの事例に加えて、シスメックス、クラレ、ディスコの3社に関して詳細な聞き取り調査をした上で、個々事例を3本の論文として出版することができた。 一方、消費財については、理論的な枠組みとして、「デザイン価値」の理論を発展させ新たなタイポロジーを創出し、ダイソンの事例研究によって、妥当性を実証した。デザイン価値の創出には、デザインとエンジニアリングの役割分担を再考し、融合させる組織戦略が必要である点を明らかにしてきた。平成27年度は上述のように、「デザイン思考」に対して「アート思考」の重要性を議論する枠組みを提示した。その議論は、マツダのデザインに関する事例研究によって、サポートされた。その中では、特に、顧客に迎合するのではなく、強い信念の表現が必要であること、及び、その表現のためには、機械や情報技術に依存するだけでなく、クラフツマンシップの活用が重要である点を強調した。
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