2012 Fiscal Year Research-status Report
ボリューム・ゾーン/BOP向け製品のアジア大の一体的な開発・生産ネットワーク戦略
Project/Area Number |
24530455
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
近藤 正幸 横浜国立大学, 環境情報研究院, 教授 (40170435)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際情報交換 / タイ |
Research Abstract |
平成24年度は、ボリューム・ゾーン/BOP向け製品の設計・開発の後の新たな現地の供給業者を取り込んだ生産体系を想定して、日本本社の調整は受けつつ、周辺国の姉妹企業とも連携しつつ、途上国の現地企業が主役を務めるといったパラダイム変換ともいうべき生産体系の再構築を織り込んだネットワーク型の製品の設計・開発体制を想定し、情報収集を主にして調査研究を実施した。 具体的には、先ず、ボリューム・ゾーン/BOP向け製品の開発・販売に関するインターネット等による情報収集を実施した。その上で、日本国内及び途上国におけるインタビュー調査を実施した。 日本国内におけるインタビュー調査については、本社においてボリューム・ゾーン/BOP市場向けの事業戦略とそのための製品開発戦略、生産戦略について、首都圏及び関西圏において実施した。これにより、日本で行う製品の設計・開発のアウトソーシングとしての海外での設計・開発活動もあることが分かった。また、海外での製品の設計・開発が効率的・効果的に展開するために、製品の設計・開発のための試験・測定の専門企業および試作専門企業もアジアに展開し始めていることが分かった。 途上国における資料収集・インタビュー調査については、タイ、フィリピン、カンボジアにおいて、日系企業、日本貿易振興機構、現地の大学等で実施した。その結果、タイでは自動車産業を中心に製品の設計・開発機能が集積し出しており、中央研究所まで設置するメーカーが出現してきたことが分かった。フィリピンでは、設計業務を中心に日系企業の活動が行われており、カンボジアにおいては、これからの感が強いが、タイの日系企業と連携する形で日本企業が進出し始め、工科系の大学も人材育成に熱心であることが分かった。 学会においては、ボリューム・ゾーン/BOP向け製品開発の分析枠組みの試論と中国における日系企業のR&Dを発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国内外でのインタビュー、インターネット等による情報収集を実施したことにより、実例をもとに日本企業がボリューム・ゾーン/BOP向け製品開発についていくつかのパターンが分かってきて研究の枠組みを構築して学会発表も行ったので予定通りに進捗してきている。 先ず分かってきたことは、ボリューム・ゾーン/BOP市場向けの製品開発を行う場合に、新規に開発するか、既存製品の改変にするかで製品開発戦略は異なることである。既存製品の改変の場合、ボリューム・ゾーン/BOP市場製品を独自に開発する場合もあれば、既存の共通プラットフォームや共通モジュールをベースに開発する場合がある。新規に開発するといった場合に、ボリューム・ゾーン/BOP市場のみを狙う場合と、先進国市場にも展開することを念頭に置いている場合がある。最近はボリューム・ゾーン/BOP市場の有望性からゼロから設計開発し直すリ・イノベーション型も増えてきている。この場合は、ボリューム・ゾーン/BOP市場のみを対象とすることも、先進国市場にも展開することも考えられる。 ボリューム・ゾーン/BOP向け製品の開発拠点についても、自動車産業といったすり合わせ型製品の場合を念頭に置きつつ、生産拠点との関係に留意して、いくつかのパターンが分かってきた。市場国では、生産拠点の有無にかかわらず、少なくとも市場ニーズの把握は行われる。市場国に開発拠点がある場合は当然そこで設計・開発が行われる。この場合、新製品の試作や試験・測定の段階では、試作の専門企業や設計・開発を支援する試験・測定の専門企業がその地域に存在すると設計・開発業務が効率よく実施される。市場国に開発拠点がない場合は開発拠点が存在する他の途上国で新製品の設計・開発が行われる。基幹部分の研究開発を要する場合や適切な開発拠点が途上国にない場合は日本や他の先進国で新製品の設計・開発が行われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、平成24年度の成果を踏まえて、研究を深めるとともに範囲を広げたい。 研究の深化については、製品開発のための情報収集から実際の生産までの流れの中での製品開発に焦点を当てる。具体的には、生産試作の専門企業や設計・開発を支援する試験・測定の専門企業の新設等が確認されているタイにおいて、これらの企業と利用する企業の関係を製品開発の効率化の観点から深堀する。さらに、中央研究所までタイに設立する日系企業が出現したことから、この特異なケースが今後一般化していくのかどうかという観点からケース・スタディを実施する。さらに、製品開発活動をデータ面から把握するため、タイ特許庁に出願する在タイ日系企業の特許や発明者としてのタイ人についての定量的分析をタイにおいてタイ語を解する協力者を確保して試みる。 研究の範囲拡大については、平成24年度はすり合わせ型の自動車産業を対象としてきたので、平成25年度はモジュール型の電気・電子産業のアジアでの製品開発も対象としていく。また、地理的にも、アジアで日本企業の電気・電子産業の研究開発センターの設置が先行したマレーシアとシンガポール、それに、最近日系企業の研究開発センターの設置もされだしているインド等についても主に比較の観点から研究フィールドを広げる。 こうした研究により、平成24年度に構築した分析の枠組みを精緻化していき、ボリューム・ゾーン/BOP向け製品の設計・開発の後の新たな現地の供給業者を取り込んだ生産体系を想定したネットワーク型の製品の設計・開発体制のマネジメントのあり方や政策的な支援のあり方を探っていく。 また、国際学会等で海外の研究動向の情報収集や研究者との情報交換を行うとともに、それまでに得られた知見を学会において発表して他の研究者からのフィードバックを得て、研究の改善を図っていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の研究費の主たる使用は、タイ、マレーシア、シンガポールなどASEAN諸国やインドなど研究のフィールドとなる地域への海外旅費である。また、国内外の学会への参加、特に海外で開催される学会への参加についても海外旅費が必要となる。海外で得られた情報の背景等を探るためには日本国内における企業や関連機関へのインタビューも必要になり、このためにも国内旅費も必要となる。このほか、情報収集のための会議への参加や特許庁図書館等の公的機関への国内旅費も必要となる。 データ収集については、データの検索、表計算プログラムへの入力。整理、作図といった作業が必要となる。特に、特許データの収集については、タイ特許庁、米国特許庁、日本特許庁のデータベースにアクセスした検索が必要となる。タイ特許庁、米国特許庁のデータベースを用いた検索では、タイ語、英語を駆使することが必須となる。こうした作業について、人件費・謝金を支出することが必要になる。また、インタビュー相手によっては現地語の通訳が必要になり、通訳の人件費・謝金を支出することが必要になる。 このほか、物品としては関連の書籍・資料の購入、さらには閲覧・コピー費用といったものへの支出が必要になる。場合によってはタイ語翻訳関連のソフトウェアなどの購入に支出が必要になる。 その他としては、国内外の学会への参加費などの支出が必要となる。 なお、平成24年度は書籍・資料等の物品購入が想定より少額であったため若干の余りが生じた。
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Research Products
(2 results)