2012 Fiscal Year Research-status Report
新規分野における製品・サービスの開発を促進させる技術評価能力と国際競争力の構築
Project/Area Number |
24530460
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
亀岡 京子 東海大学, 政治経済学部, 准教授 (80589614)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福嶋 路 東北大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (70292191)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 生活支援ロボット / 製品開発 / 製品デザイン / 介護用品 / 技術の評価能力 |
Research Abstract |
24年度で実施したことは医療用機器や生活支援用ロボットが実際にどの程度実用化され、実際に利用されているのかをセミナーや研究会に参加して現状の把握に努めた。 その過程で分かったことは、医療用機器は実際に使用する医師の評価がすべてであり、製品開発の意味においては最終的にメーカーの意向が反映されることが少ないことである。これはつまり本研究の目的である医療機器メーカーの既存技術や埋没技術が活用されたとしても最終的な技術評価は自社だけではできないということである。したがって、医師のフィードバックを受けて1台の納入済みの機器や設備を調整しつつ使用することになり、長期的にはその改善点やノウハウは技術の蓄積にもつながるかもしれないが、現状では医療機器メーカーの技術評価能力を大きく高めることには時間がかかることが分かった。 一方、生活支援用ロボットは介護の現場等で実用化が始まっており、こちらの使用後のフィードバックの蓄積は比較的短期間でさまざまな利用現場から集積されているようにみえた。たとえば、装置や機器を購入した病院がリハビリテーションや介護で利用することで実際の患者の機能回復度を測定することができている。また、それら機器や装置のデザインによっても患者や介護者の負担軽減につながることが分かるといった具合にメーカーにとってロボット購入者あるいは購入者を介して利用者がフィードバックを出していくことで機器や装置の改善が行われていることが分かった。 この分野に関しては、工学系や工業デザイン系の人たちが関与しているが、経営学領域からのアプローチは行われていないようである。しかしながら、それがこの領域を研究することが無駄になるわけではない。むしろ、高齢化社会に向けて介護される側だけでなく介護する側もQOL(生活の質)を高めるための製品開発あるいはデザインを考えるべきであることがこの1年で分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
情報収集に関して獲得できたことは、大きく分けて次の3つに集約できる。 ・当初考えていた研究範囲をある程度限定する必要があることが分かったこと。 ・現状では生活支援ロボットが必ずしも「人型ロボット」ではなく、機能や目的がさまざまであることが分かったこと。 ・従来型の産業と比較すると、技術的な機能(機械的、電気的、電子的)の必要性もさることながら、デザイン性も重要な評価基準になることが予想されることが分かった。つまり、ヒューマンインターフェイスが必要な製品では接触したときの感覚が重要になり、実際の装着感や使用感などきめ細やかな評価基準を設定していく必要があることが分かってきた。 ただし、まだ聞き取り調査の多くは実施することができていない。平成25年度にはもう少し活動範囲を広げていく必要があると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは研究者が所属する大学を通じて、生活支援用ロボットの開発状況を把握し、その実用化がどのような具体的なメーカーと進んでいるのかを調査する必要がある。というのは、研究計画段階でわれわれが想定していたある程度の規模を持った大企業(例えばトヨタなど)かなり厳格な評価基準を作りこんでいる最中であり、かなり慎重な姿勢で実用化への踏込みが遅れているような状況に見えるためである。ただし、この点については、さらに聞き取り調査で確認が必要となる。 さらに、大学等研究機関と連携して製品開発にあたっている企業に対する調査を行う。これは基本的に国内企業となる。 また、実際に介護現場で人間工学やデザインを重視した道具を活用しているといわれているデンマークの介護施設等に聞き取り調査に行きたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
最大の使途は海外への調査で、できれば介護に関する設備や装置が整っているデンマークへの視察を実施したいと考えている。ただし、まだ具体的にどこに行くべきなのか、果たして本当に参考になるかなどもう少し詳細に今後検討する必要がある。 しかしながら、現段階では海外への調査に約40万円強を見積もり、そのほか国内での調査に15万円程度は必要になると考えている。そのほかの経費は消耗品や書籍、翻訳料などとなる。 また、平成24年度の資金のうち約19万円を平成25年度に繰り越した理由は、上述した海外調査のための資金を確保するためである。つまり、平成25年度の配分額60万円から間接経費を差し引いた42万円では海外調査研究だけで資金がすべてなくなってしまう。特にデンマーク等の欧州への渡航は時期によって航空運賃が大きく異なる。そのため、先方の日程に加えて大学行事との調整を考えた場合、急な変更などによって格安航空券の調達が難しいことが想定される。したがって、平成24年度の繰越額を活用することで国内外での研究調査に係る旅費に充当するものである。
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