2013 Fiscal Year Research-status Report
知覚されたエンプロイアビリティ統合モデルの研究ー国際比較・時系列比較の観点から
Project/Area Number |
24530473
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
山本 寛 青山学院大学, 経営学部, 教授 (30240120)
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Keywords | employability |
Research Abstract |
以下2回の学会発表を行った。1「量的および質的雇用不安と勤労者の職務態度・行動との関係におよぼすエンプロイアビリティの影響」日本労務学会第43回全国大会研究報告論集,pp.139-146(2013年7月6日:大阪国際大学)。分析の結果、雇用不安は、情緒的コミットメント、キャリア満足およびキャリア展望の低さに寄与し、退職意思の高さに寄与した。雇用の価値的側面の劣化に対する不安(質的雇用不安)は、職務満足およびキャリア満足の低さに寄与し、退職意思の高さに寄与した。またエンプロイアビリティは、雇用不安と職務満足およびキャリア満足との関係を、質的雇用不安と職務満足およびキャリア展望との関係を調整していたことが明らかにされた。 2「専門職のキャリア・プラトー化と退職との関係におよぼすエンプロイアビリティと専門性コミットメントの影響」産業・組織心理学会第29回大会発表論文集,pp.54-57 (2013年9月7日:京都橘大学:松下由美子・田中彰子・吉田文子・杉本君代・雨宮久子各氏との共同発表)。分析の結果、組織にとって重要なリテンション(引き留め)の対象であるエンプロイアビリティの高い専門職において、将来の昇進可能性の低下(キャリア・プラトー化)が高まった場合、自分のもつ専門性へのコミットメントが低いほど、退職の意思が高いことが明らかにされた。 以下1回の講演を行った。「働く人のためのエンプロイアビリティ-その概念、測定と実証分析の結果から」日本人事テスト事業者懇談会第51回研究会講演(2013年10月24日:日本出版クラブ会館)。バブル経済崩壊以降雇用不安状況が繰り返されるなか、近年、ヨーロッパを中心に再び注目されているエンプロイアビリティについて、その概念、測定と実証分析のその後の懇親会と併せ、研究成果発信の重要な機会となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究実施計画の中心は、質問票調査の実施、分析および分析結果の発表であった。調査は2回実施した。第1が、2013年8月27日から9月1日まで、調査専門会社P社が保有するわが国民間企業正規従業員のモニター653名に対するインターネット調査である。第2が、中国における国際調査である。2013年8月22日から10月20日まで、東北部を代表する経済発展都市である大連に進出している日本企業6社の現地(正規)従業員219名に対し質問票調査を実施した。調査結果の多変量解析による分析は、前者については既に終了した。結果の発表は、前者について来年度7月20-21日の日本労務学会で発表予定である(発表題目「組織従業員のエンプロイアビリティ・スキルとエンプロイアビリティ知覚との関係」)。さらに、研究書(単著)『働く人のためのエンプロイアビリティ』(創成社より2014年4月刊行予定)の第7章「エンプロイアビリティ・スキルとエンプロイアビリティ知覚との関係」として掲載予定である(既に最終校正終了)。
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Strategy for Future Research Activity |
第1に、【研究計画調書】で記したように、日本語版の研究書(『働く人のためのエンプロイアビリティ』)が2014年4月に刊行される(創成社刊)。これを、メーリングリストへの記載、学術誌への書評掲載依頼や献本等によって広く、学内外の研究者および一般の勤労者の方々に発信する。また、研究室のホームページをリニューアルし、アクセスログによるWEBサイトの分析によって、研究成果(特に著書)に興味を持った層を分析し、今後の共同研究や講演等さらなる社会への発信につなげていく予定である。そのための専門業者への委託料を予算に計上する。 第2に、縦断質問票調査の2回目を以下の手順で行う予定である。当初予定通り、アメリカおよび中国の民間企業正規従業員を対する質問票調査を同時点で実施する国際比較調査を実施する。前年度同様、調査会社にインターネット調査を委託しアメリカ、中国各200人、日本300人のデータ回収を目標とする。 次に、調査結果の分析、発表等として、結果を入力したデータファイルを調査会社に作成してもらう。そのため謝金等の予算を計上している。 さらに、ファイルを研究代表者が研究室に所有しているSPSS等の統計分析ソフトを使って分析する。 加えて、分析結果を学会報告、論文の形にとりまとめ、公開する。学会報告については、産業・組織心理学会、日本労務学会等を予定している。論文は学内誌(青山経営論集)、国内のレフェリー付学会誌(産業・組織心理学研究、日本労務学会誌等)、海外のレフェリー付学会誌(International Journal of Human Resource Management, etc)等を予定している。海外学会誌への投稿については、ネーティブチェックを専門翻訳会社に依頼し、予算に計上する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度、日本、アメリカ、中国3か国の勤労者に対するインターネット調査による国際比較調査のうち、アメリカおよび中国に対する調査を実施しなかったため。 次年度、調査会社にアメリカ、中国各200人、日本300人(縦断調査2回目)のデータ回収を目標とするインターネット調査を委託する。また、調査結果の分析、発表等のため、結果を入力したデータファイルを調査会社に作成してもらう。以上の費用に充当する予定である。
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