2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24530474
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
吉田 猛 青山学院大学, 経営学部, 教授 (00200999)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 起業活動 / スタートアップ / 新興起業理論 |
Research Abstract |
本研究の理論的基盤であるエフェクチュエーションおよび起業活動に関する新しい理論的パースペクティブの論文や書籍の収集を行った。これら多様な文献を、知識創造理論を基にして分類を試みた。本研究の前に既存企業のビジネスモデル創造について知識創造理論から分析を行い、二つの知識創造のタイプ(仮説逸脱型と行為逸脱型)があることを発見したが、この理論とタイプが起業という現象に適用できるかどうかを探りながら文献のサーベイを行った。結果として、起業を「高不確実性下のビジネスモデル創造」と捉えれば、上記の理論や二つのタイプをも提供可能だと分かった。ただ、既存企業と大きく異なる点――知識創造プロセスの高速反復化――も見いだせた。この文献サーベイによって、理論的な基盤が明確ではない起業研究にとって、知識創造論が一般理論の候補となりうることが明らかとなった。 もう一つの実施予定項目は、調査対象となる起業者のリストづくりとインタビュー調査という実証であった。リストづくりの前に複数の起業者へのインタビューを行ってみた。そこで理解できたことは調査対象者を適切に選択していかないとインタビューは多くの労力と時間がかかる反面、得られる情報がきわめて少ないということであった。また、半構造化されているとはいえインタビューでは起業者の内面的な思考の内容を深く掘り起こすことが困難なことも分かり、米国で使われた「事例を基にした内面調査」手法をも使用することとし、その翻訳および米国特有な概念や言い回しを日本の実情に合わせる形での修正を今年度行った。それを使いベテラン起業者に対して予備調査を行ったが、デジタルレコーダーを手に取り吹き込む形としたためか、かなり緊張しかつ論理的に答えようとしてしまい、うまく内なる声を引き出すことができなかった。リラックスできる雰囲気をいかにうまく作り出せるかが次期の課題となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
理論的な研究に関してはまったく予定通り進んだと言える。しかし、今期の後半で行う予定であった起業活動に関する実証研究に関してはかなりの遅れが生じている。インタビュー候補者(ベテラン起業者)リストの作成を正確に行うよりも、起業を行った人すべてに起業に関するアンケートをまず送付して、その中から対象者を選び出す方が実効性があると考え、アンケート作成に取り組むことにした。 しかし、エフェクチュアルな論点の有無を明確に浮かび上がらせ、かつできるだけ少数のアンケート項目に絞り込む作業が難航した。特に、エフェクチュアルな傾向を持ちながらも、公的あるいは私的起業支援組織との関係で合理的なパースペクティブを取らざるを得ない場合、合理的な部分とエフェクチュアルな部分をどのように峻別すればいいかを少数の設問で明らかにする箇所が難しくアンケートの完成が遅れることになった。そのため、当年度にアンケートの完成と送付ができないという状況に至った。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、アンケートの完成を目指す。基本的な枠組みはできているので速やかに完成させ、対象者宛にアンケート依頼を発送する。アンケートへの回答はウェブで行うことを予定しており、そうすればほぼ自動的にデジタルデータとして集計がされるため、後半にはすぐさま分析に取りかかれると考えている。 期の後半では、アンケートで「短時間のインタビュー調査」あるいはより長い時間がかかる「事例を基にした内面調査」を依頼し、受諾してもらった企業に向けて上記調査を実施する。 なお、この調査の前に、アンケートの回答時期の間に、これまで一回しか行っていない「内面調査」の先行調査をさらに複数回行い、その問題点を事前に修正し完成度を高めておくことにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
まずアンケートへの回答依頼と回答先のウェブ(URL)を記載した封書を郵送し、ウェブ上で回答をしてもらうとともに、比較的短いインタビュー調査と1時間半程度の「事例を使った内面調査」とを両方、あるいは片方受け入れてもらえるかどうかを確認する。受け入れてもらえた場合には起業者の居住地にまで出向いて調査を実施する。そのため、郵送料および交通費、旅費が必要となる。 すでに起業のパースペクティブや理論についてはかなり網羅的に調査を行ってきたが、さらなる理論的な調査のためおよび今期に行う実証研究の方法及び成果に関する情報を交換するために、複数の学会に参加して情報を収集する。それとともに、起業研究者との間での研究全般に関する交流を予定している(学会参加費、交通費)。 日本の現状に加えて、東アジアの起業情報を入手し、エフェクチュエーションの理論が当該地域へも適用できるかどうかの事前調査をし、この理論がより広範に適用できるか否かの確認も行う(海外旅費)。
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