2013 Fiscal Year Research-status Report
中国におけるCSR(企業の社会的責任)の研究―中央企業の取り組みを中心に―
Project/Area Number |
24530482
|
Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
酒井 正三郎 中央大学, 商学部, 教授 (10138612)
|
Keywords | 中国 / CSR / 中央企業 / 企業経営者 / 一般市民 |
Research Abstract |
本研究は、中国企業のトップランナーである中央企業(中央政府機関である「中国国有資産監督管理委員会」の直接管理下にある企業で、2013年末時点で合計107社)のCSRへの取り組み状況を調査し、移行期中国のCSRの特徴と構造について考察を行おうとするものである。取り組みの第2年度である平成25年度は、当初の計画では、夏季休暇中の8月に中央企業へのアンケートとヒアリングを実施する予定で、同年4月以降より各企業の連絡先(者)の確認や質問表の整理などを行った。ところが、日本政府の尖閣諸島国有化に端を発した、反日デモに象徴される日中間の激しい摩擦の発生によって、2012年以来政府(党)直属の中央企業の反応は非常に厳しいものになり、日本人研究者への協力は基本的に期待できないような状況に至り、2013年度もその状況に基本的な改善は見られなかった。そこで、同年度は、2012年度に中国側研究協力者を通じてWeb上で実施した、一般企業の経営者と一般市民向けのアンケート調査(Questionnaire Survey)について、そのデータ解析に研究時間の多くを費やした。分析対象としての回収サンプル数は企業経営者向けが112通、内有効回答は104通、一般市民向けが436通、内有効回答は392通であった。日本人の研究者による、中国のCSRに関するこのような大規模な調査はこれまでなされたことがなく、その意義・重要性はきわめて大きなものがあると考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は3ヵ年計画で開始されたものであり単年度だけの成果測定は困難である。上でも述べたとおり、当初の計画で予定していた中国中央企業へのアンケートとヒアリングは尖閣諸島の領有権問題という日中間の懸案事項の政治的問題化により、これがアカデミズムにおける草の根交流も影響したため、平成24・25年度内に本格実施には至らなかった。 とはいえ、3ヵ年計画の2年目以降に想定していた中央企業以外の一般企業の経営者向けアンケートや一般市民向けのアンケートは、当初研究計画書で予定していた数を大幅に上回って実施、回収することができ、この点では上首尾な達成度をマークし得たと評価している。この成果は研究計画書にも記載した中国側研究協力者の尽力に負うところ大である。 予定よりサンプル数が多くなったため、データ解析のための所用時間は想定よりやや眺めにかかたが、現在はほぼその作業が終了し、非常に興味深い結果が得られている。 なお、平成26年度は夏季休暇中に、本来平成24年度夏季実施予定の中央企業へのアンケート・ヒアリングを行う予定である。いうまでもなく、日中間の政治的状況に依存するところ大であるが、仮に数社という数であっても、中国人研究者の協力を得ながら可能な範囲内で実施できるよう最大限努力したいと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
上に記載の通り、中国中央企業は中国中央政府(実質的権限でいえば経営者の選任権などを持っている中国共産党)の影響力が強く、それゆえ同企業へのアプローチの在り様は、その時々の政治状況に大きく左右される。その意味で、中央企業へのアンケートとヒアリング実施の成否は、今後の日中関係の展開に待つところ大である。 とはいえ、研究協力者である中国人研究者からの紹介によって、政府に対して影響力を持つ大学や政府系シンクタンクに在籍する著名な研究者を新たに研究協力者に迎えることができたので、仮にアンケートやヒアリングの実施が難しい場合でも、中央企業におけるCSR関連の資料の入手などは可能になるものと考えている(その場合には、文献・資料をベースとした静態的研究が中心になるが、それはそれで、「中央企業のCSRに熱心に取り組んでいる」というプロパガンダ的情報は数多くあったもののその具体的内容は不明な点が多かった現状からすれば、一定程度それを明らかにする価値は小さくないものと考えている)。 また、平成26年度の課題として重要であるのは、上述した前年度実施の経営者と一般市民へのアンケートの分析作業を論文にまとめ、学会誌や学内紀要に発表することである。 なお、平成24年度の研究費予算は、90万2,802円の使用残高が発生した。これはそのまま中央企業へのアンケート・ヒアリング実施のための中国旅費と滞在費(複数回分)、および謝金等に予定していた部分である。なお、一般企業の経営者や一般市民のアンケートは当初よりネット利用を想定していたため、研究計画書では有意の予算計上は行っていない。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
中国「中央企業」へのCSRアンケート調査が、2012年度以来の反日運動の影響で実施できなかっため、旅費・人件費・謝金に使用残が生じてしまった。 次年度は上記アンケート調査に再チャレンジしてみると同時に、報告書作成等に一定の支出が見込まれることから、次年度使用額として繰り越された分を含め全予算消化は十分に可能であるものと見込んでいる。
|
Research Products
(2 results)