2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24530487
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
安藤 直紀 法政大学, 経営学部, 教授 (50448817)
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Keywords | 国際経営 / 新興経済 / 制度理論 / 多国籍企業 |
Research Abstract |
本研究は、多国籍企業の公式的及び非公式的制度が、多国籍企業の行動や業績にどのような影響を与えるのかを明らかにすることを目的とし、1、新興経済における制度がどのような要素によって構成されているのか、2、規範的に合理的な行動はどのような条件の下で経済的に合理的になるのか、3、内的制度と外的制度が対立したときに多国籍企業はどのような行動をとるのか、という3つのリサーチ・クエスチョンを軸に進められている。 最初のクエスチョンについては、先行研究のレビューと企業へのインタビュー調査からアプローチし、多国籍企業の活動に影響を与える制度は、どのような構成要素を含むのかを探った。現在のところ、制度は、政治的要素、経済的要素、法律的要素、社会文化的要素から構成されるという考えにいたっている。2つ目および3つ目のクエスチョンについては、インタビュー調査およびデータ分析を行い研究を進めた。2つ目について、進出国のドミナント・プラクティスを採用することは、多国籍企業の業績に負の影響を与えるという仮説のもとで研究を進めてきたが、両者は必ずしも線形な関係ではなく、様々なモデレータが存在しうることが分かってきた。また、多国籍企業はライバル企業がとっているプラクティスを模倣することがあり、この模倣行動は業績に負の影響を与えるという仮説にいたったが、これも線形な関係ではないことが分かってきた。さらにプラクティスだけでなく、人材の現地化というかたちで規範的に合理的な行動が顕在化することがあるが、人材の現地化と多国籍企業の業績の関係についても研究を行った。3つ目について、多国籍企業のプラクティスと進出国のプラクティスが対立することがあるが、多国籍企業の進出国への影響力や、海外子会社の本社に対する交渉力などの要因により、多国籍企業による対立への対処が異なってくるという仮説を導出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1、新興経済における制度がどのような要素によって構成されているのか、2、規範的に合理的な行動はどのような条件の下で経済的に合理的になるのか、3、内的制度と外的制度が対立したときに多国籍企業はどのような行動をとるのか、というリサーチ・クエスチョン別の進捗状況を見ると、2に関してはおおむね順調に研究が進展した。国際学会での研究発表を今年度に行い、次年度にも研究発表が予定されている。1に関しては、政治的要素、経済的要素、法律的要素、社会文化的要素を構成すると考えられる項目の一部についてデータ収集が進んだ。3に関しては、前年度に予想よりも研究が進捗しなかったが、今年度は、先行研究のレビュー、インタビュー調査、およびデータ分析という各アプローチともある程度の進展をみた。 研究方法別に進捗状況を見ると、先行研究のレビューおよびインタビュー調査については、順調に遂行することができた。当初は新興国のみをインタビュー調査の対象と考えていたが、今年度は先進国でもインタビュー調査を行い、さらに日本企業以外にも調査範囲を拡大した。今後行うデータ分析のために用いられるパネル・データの作成作業も、多くの変数の作成を要するため作業は完了していないが、順調に推移しており、部分的には分析に活用できる状態にある。そのデータを用い、今年度は様々な分析を行った。分析結果のいくつかは既に国際学会で発表され、今後も発表することが確定している。
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Strategy for Future Research Activity |
新興経済における制度がどのような要素によって構成されているのか、というクエスチョンのもと、新興国に焦点をあてて制度の構成要素を探ってきたが、先進国でインタビュー調査を進めるにつれ、先進国でも制度が多国籍企業に無視できない影響を及ぼし、多国籍企業の活動の障害になりうることが分かってきた。今後は、先進国においてもインタビュー調査を進め、具体的な制度の構成要素を特定していく。さらに、制度を各国ごとに数値化する作業に入っていく予定である。 規範的に合理的な行動はどのような条件の下で経済的に合理的になるのか、というクエスチョンについて、規範的に合理的な行動という概念の操作化を試みてきたが、今後も多国籍企業の海外子会社にとって重要なプラクティスを特定し、その操作化をしていく。また、規範的に合理的な行動と多国籍企業の業績とをモデレートまたはミディエートする要因を探っていく必要がある。モデレータ及びミディエータの特定については、先行研究のレビュー及びインタビュー調査の両方からアプローチしていく。 内的制度と外的制度が対立したときに多国籍企業はどのような行動をとるのか、というクエスチョンについては、今後最も研究の速度を高めていく必要がある。今後のインタビュー調査は、このクエスチョンを中心に進めていく計画である。まず、2つの制度が対立したときに多国籍企業がとる行動を決定する要因を特定することを中心に取り組み、その後、概念の操作化、そして仮説検定へと研究を進める計画である。 今後も、国際学会での研究発表、そして国際学術誌への投稿という形で研究成果を発表していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
海外でのインタビュー調査を、もう1カ国で行う予定だったが、これまでの研究をもとに、調査を実施する国や調査対象企業、調査項目などを再度検討して次年度に実施することにした。また、パネル・データの構築や制度の数値化に必要なデータの種類を特定する前に、さらに十分な検討が必要なため、データの購入を次年度に行うことにした。 新興国を中心に行ってきたインタビュー調査を、先進国にも拡大して継続する。また、新興国の範囲も、アジアだけでなく、東欧まで拡大してインタビュー調査を行う。さらに、日本企業だけでなく、他の先進国からの多国籍企業にも範囲を広げてインタビュー調査を行う。このための旅費を支出する予定である。パネル・データの構築、制度の数値化、及び仮説検定に必要なデータの購入も行う。必要に応じてデータ作成のために人件費を支出する予定である。また、データの解析に必要なソフトウエアや器材等も購入する予定である。既に確定したものも含めて、国際学会での研究発表を行っていく。このための旅費を支出する予定である。
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