2014 Fiscal Year Research-status Report
質的分析に基づいた中小企業の連携能力構築に関する研究
Project/Area Number |
24530489
|
Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
稲垣 京輔 法政大学, 経営学部, 教授 (10327140)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | インキュベーション / クリエイティブ・クラスター / 連携能力 / 質的研究 / インターテキストアプローチ / 産業集積 / イタリア / パドヴァ |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、大阪の広告制作分野における小企業の経営者とインキュベーション機関のマネジャーとの相互作用に関するヒアリング調査を実施し、クリエイティブ・クラスターという表象がどのように受け入れられて行くかについて明らかにした。もともと、主体間の連携のない状況のもとでは、クラスターの概念の受け入れられ方にも従来の製造業のクラスターとは異なっていることが発見事実として提示された。つまり、ビジネス指向ではない遊びや学習を通じた関係が形成され、地域内部においては、取引における直接的な連携関係の発展ではなく、相互に知り合う場が求められ、その重要性が主体間の間で共有されていくことが明らかにされた。 本研究の成果に関しては、ロッテルダムのエラスムス大学で開催された第30回欧州組織学会(EGOS)にて報告し、事前に提出していたフルペーパーが、産業クラスターのマネジメントに関するワーキング・グループの論文集に採用される見込みとなった。本論文への加筆、修正は、翌年度(平成27年度)に引き継がれる予定である。 また、イタリアのパドヴァ大学でおこなわれた研究会にて同成果を報告し、パドヴァ市内における大学と行政が設立したインキュベーション施設におけるとりくみと成果を比較しながらディスカッションがおこなわれた。同国の事例との比較を盛り込んだ成果については、次年度に同大学の研究者を招聘することになり、さらなる研究の発展段階において検討する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、神戸医療クラスターにおける医工連携、ミランドラの医療機器産業、オメーニャのデザイン開発連携も研究対象に加えていたが、費用と時間の面から渡航と出張回数が制限されており、調査対象へのアクセスが困難だった。そのため、大阪のクリエイティブ・クラスターにおける企業家の連携能力の獲得について、定点観測を継続的に進める方向に切り替えることによって、2011年以降の劇的な変化の推移を克明に調査することが可能となった。研究の目的に変化はないものの、研究対象を少数に絞り込んで集中的に調査することによって、質的研究においてより質の高いデータを豊富に得ることが可能となった。また、研究成果を論文にまとめる作業も順調に推移している。以上の結果から、本研究は概ね順調に進展していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる次年度は、これまでの研究成果を論文として公刊することが目標となる。また、イタリアのボローニャ大学で開催されるワークショップ「カルチュラル組織のマネジメント」にエントリー予定であり、報告からさまざまなフィードバックが得られるものと期待する。 また、次年度に継続予定のヒアリング調査の結果も盛り込みながら、日本ベンチャー学会で成果報告をおこない、さらに経済産業研究所に対しても、成果の一部を公開する予定である。
|
Research Products
(1 results)