2014 Fiscal Year Annual Research Report
両利き能力の実証研究:研究開発コンテストにおける知識プロセスの解明
Project/Area Number |
24530511
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
岡村 浩一郎 関西学院大学, 商学部, 准教授 (80580349)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
馬場 靖憲 東京大学, 先端科学技術研究センター, 教授 (80238229)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | イノベーション |
Outline of Annual Research Achievements |
戦略論において近年関心が高まっている「両利き能力」は、成長しつつある産業でとくに必要とされるものである。しかし、成長途上の産業についてはどこまでを当該産業とみなすかという範囲定義の困難さ等が理由で、知識の創出・伝播から活用に至る一連のプロセスの解明に向けた試みは限られている。一方、研究者が互いに競争する研究開発コンテストは、継続してコンテストに参加している研究者に加え、新規参入や退出がある等、企業が競争する市場と共通点を持つと考えられる。それゆえ、毎年、開催規模が拡大しつつあるコンテストは、成長途上の産業に相当すると考えられる。本研究はコンテストを「両利き能力」の実証研究の場として活用したものであり、前年度までにコンテストはコンテスト参加者の研究の質よりも研究生産性に明らかな影響を与えていること、長期的には研究パフォーマンスに正の影響を与えていること、そして自身はコンテスト未参加であるもののコンテスト参加研究者と共同で研究を進めている研究者についても知識電波・スピルオーバー効果が増加させる効果があることを明らかにした。 コンテストは複数の部門に分かれて行われている。最終年度については、前年度に生じていた書誌情報データベース変更の結果生じたデータ整備・更新の遅れを取り戻すべく作業を進め、続いてコンテストの部門間の比較を行った。そして相対的に成熟度の高い部門とそうでない部門では、後者の方がパフォーマンスが高い傾向を有することを確認した。一連の検証結果は、成長途上の産業で活動している企業の「両利き能力」のうち、はじめに「活用」能力が、続いて「探索」能力が、それぞれ伸長することを、そして成熟するにつれ能力の伸長が見られなくなることを示唆するものである。前年度からの作業の遅れの影響で最終年度については本研究課題の関連成果を学会・学術誌発表で発表するべく準備を進めている段階である。
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