2012 Fiscal Year Research-status Report
ベンチャーキャピタルの新技術ベンチャー育成機能に関する国際比較研究
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24530512
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
桐畑 哲也 甲南大学, マネジメント創造学部, 准教授 (60379542)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 公的VC支援、資金供給(欧州) / ”新”エンジェル投資家(欧州) |
Research Abstract |
本研究課題の「研究の目的」は、米国ベンチャーキャピタル(VC)投資モデルに倣いVC支援施策を進めた米国以外の我が国及び主要各国において、VC、その投資先新技術ベンチャー(NTBFs)等に対する個別事例研究を実施する。その上で、我が国特有の起業環境を踏まえて、VCの投資先、NTBFs育成は、いかにあるべきかを分析、VC、NTBFsへの経営へのフィードバック、及び、政策的な含意の提示を目指すものである。そのため、本研究では、VCの投資先NTBFs育成機能に焦点を当て、以下のリサーチクエスチョンを設定している。 (1)米国以外の各国VCの投資先NTBFs育成の現状と課題は、いかなるものか (2)これら各国と我が国VCにおける投資先NTBFs育成の共通点及び相違点は何か (3)我が国VCの投資先NTBFs育成は、いかにあるべきか 本年度は、研究初年度ということもあり、リサーチクエスチョン(1)、(2)を念頭に、「研究実施計画」に乗っ取り、欧州のVC関連協会、個々のベンチャーキャピタリスト、大学、公的機関へのヒヤリングを実施した。特筆すべきは、まず、欧州の金融動乱を背景として、民間資金による広義のベンチャー、プライベートエクイティ投資回避傾向である。第2に、公的セクターによる地域経済活性化、特に、テクノロジーをベースとした施策遂行におけるツールとしてのVCの有効性認識のもと、広義の公的資金の存在感の増加、最後に、いわゆる従来のエンジェル投資家とは異なるタイプの個人投資家、代表的には、クラウドファンディングといわれる資金等、新たなタイプの資金である。こうした点は、桐畑(2012)において、一部研究成果として反映したが、次年度以降、上記リサーチクエスチョン(3)探求に向けたファーストステップと評価している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究の目的」の達成度については、「おおむね順調」としている。【研究実績の概要】で既に指摘したが、本年度は、本研究のリサーチクエスチョン(1)米国以外の各国VCの投資先NTBFs育成の現状と課題は、いかなるものか、(2)これら各国と我が国VCにおける投資先NTBFs育成の共通点及び相違点は何か、すなわち、予断を持たずに、リサーチを一定程度積み上げることができた。限られたスペースだが、当該年度のリサーチにおいて特筆すべきは、「①公的VC支援、資金供給の再評価」「②“新”エンジェル投資家」についてである。 「①公的VC支援、資金供給の再評価」については、【研究実績の概要】で若干指摘したが、欧州のベンチャー、プライベートエクイティ投資における相対的な公的資金の存在感の増大は、米国モデルの傾向とは明らかに異なる傾向である。先行研究においては、公的なVC支援、資金供給については、おおよそ批判的な傾向がみられるが、スイス等、個々のベンチャーキャピタリストとNTBFsの事例では、公的なVC支援、資金供給なるが故のプラス面も、ヒヤリングからは得られた。 「②“新”エンジェル投資家」については、いわゆる従来のエンジェル投資家とは異なるタイプの個人投資家、代表的には、クラウドファンディングといわれる資金等も、欧州では、日本より多くの取り組みが散見された。これらは、米国が先行しているが、これまでの米国VCモデルと認識されていたモデルとは異なるものである。これらも、今後研究を深めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題については、現状、変更修正する点は見当たらず、当初の計画通り、来年度以降も、進めてまいりたい。ただ、昨年度研究において、浮き彫りとなった新たなキーワード「公的VC支援、資金供給」「”新”エンジェル投資家」といった視点は、常に念頭に置きながら、フレキシブルに進めてまいりたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度についても、本年度同様、VC関連団体、ベンチャーキャピタリスト、研究機関、公的機関等への個別ヒヤリング調査を計画している。研究対象地域は、昨年度実施地域を除き、先行研究から、米国のVC投資モデル(Gompers and Lerner, 1999)の政策的導入が認められ、且、VC投資、NTBFsに対するVC投資が比較的活発な地域、すなわち、英国、豪州、スウェーデン、アイルランド、ベルギー等を計画している。
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