2014 Fiscal Year Research-status Report
バリューチェーンにおける価値共創のメカニズムに関する研究
Project/Area Number |
24530516
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Research Institution | Otaru University of Commerce |
Principal Investigator |
近藤 公彦 小樽商科大学, 商学研究科, 教授 (10205552)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 価値共創 / プラットフォーム / オープン・イノベーション / サービス・イノベーション / クックパッド |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの理論的研究の成果を踏まえて、今年度は、価値共創に関わる詳細な事例研究を行った。すなわち、日本最大のレシピサイトであるクックパッドを価値共創のプラットフォームとして位置づけ、同社の事例分析を通じて、価値共創プロセスにおける企業と消費者の関係を考察し、価値共創、オープン・イノベーション、およびサービス・イノベーションに関する以下の理論的洞察を導き出した。 第1に、クックパッドの価値共創プラットフォームにおいて、消費者の主体的な関与により共創価値物であるレシピが創発的に生み出されている。ここで重要な点は、ユーザー・イノベーション論の前提とは異なり、クックパッドにおいて価値共創する消費者は先端的な知識を持つリード・ユーザーではなく、一般の「料理の素人」であり、その意味でS-Dロジックでいうところのオペラント資源の保有が質・量ともに必ずしも多くはないことである。クックパッドはそうした一般の消費者を結びつけることにより、膨大なオペラント資源を蓄積するプラットフォームとして機能している。それゆえ、クックパッドは、消費者がオペラント資源を統合する価値共創プラットフォームとして位置づけることができる。 第2に、クックパッドによる価値共創プラットフォームはオープン・イノベーションを引き起こす基盤であり、オープン・イノベーションを取り込むクックパッドは同時に、共創される価値の創発性を内包している。クックパッドのプラットフォームにおいて事前にどのような付加価値の高いレシピが消費者から投稿されるのかはクックパッドも消費者も予測できず、また食品メーカーによる用途開発の要望に応えたレシピも、事前にどのようなレシピが投稿されるかは予測不可能である。それゆえ、レシピという共創価値は、事後創発プロセスに依拠したプラットフォームとして位置づけることができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は、価値共創に関わる実証研究を行う予定であったが、実証分析で用いる概念、変数をより特定化する必要が生じたため、詳細な事例研究を優先的に実施することにした。
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Strategy for Future Research Activity |
事例研究で明らかにした価値共創に特定的な概念、変数を用いて、実証分析のための枠組みを構築し、アンケート調査に基づく検討を行う。
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Causes of Carryover |
今年度は、価値共創に関わる実証研究を行う予定であったが、実証分析で用いる概念、変数をより特定化する必要が生じたため、詳細な事例研究を優先的に実施することにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
事例研究で明らかにした価値共創に特定的な概念、変数を用いて、実証分析のための枠組みを構築し、アンケート調査に基づく検討を行う。
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