2012 Fiscal Year Research-status Report
企業が発信する既存顧客の経験が潜在顧客におよぼす心理効果に関する研究
Project/Area Number |
24530517
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
澁谷 覚 東北大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (00333493)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 類似性 / 結合性 / ソーシャル / 購買意図 / 購買意思決定 |
Research Abstract |
実験用Webサイトを用いて会場調査による実験を実施した。今日の消費者は、ネット上で見知らぬ他者の経験を参照して、自己の将来の経験を予測するが、その予測が実際の購買意思決定や購買意図に及ぼす影響は、(1)他者に対する類似性認知、(2)他者経験に含まれる結合性、(3)他者経験の発信源が、当該経験の対象となった製品・サービスの発売元である企業か(企業条件)、あるいは中立のクチコミサイト(ソーシャル条件)か、によって異なるという仮説を立てた。 実験は、2(類似性:高類似/低類似)×2(結合性:高結合/無結合)×2(発信源:企業/ソーシャル)の被験者間デザインであり、各実験条件には15名の被験者を割り当てた。 実験の結果、他者に対する類似性認知については、ソーシャル条件では高類似条件(3.9(.98))>低類似条件(3.39(1.17))(p<.10)と傾向差が見られたのに対して、企業条件ではn.s.であり、両条件間で差異が見られた。結合性認知に関しても、ソーシャル条件では高結合条件(3.74(.82))>低結合条件(3.35(.94))(p<.10)と傾向差が見られたのに対して、企業条件ではn.s.であり、両条件間で差異が見られた。 他者のクチコミに影響を受けた度合いに関しては、ソーシャル条件では「高類似×高結合」および「低類似×高結合」条件で評価が有意に増加したのに対して、企業条件では「高類似×高結合」条件のみであり、ここでもソーシャル条件の方がやや影響力が大きいことが示唆された。 今回の実験では、各条件に割り当てられた被験者数が少なかったために有意な結果は得られなかったものの、企業条件とソーシャル条件では他者に対する類似性認知が異なること、どちらの条件にも結合性は明確な影響を及ぼすこと、などの知見が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度にあたる平成24年の実験では、すべての要因を組み込んだ8条件の実験を行ったため、1条件あたりに割り当てられた被験者数が15名と少なく、このためもあって必ずしもすべての仮説に対して、統計的に有意な結果は得られなかった。 しかし初年度の実験によって、企業条件とソーシャル条件では、結合性の効果は変わらないが類似性の効果は異なることが示され、当初の仮説の方向性は誤っていないことが示唆された。 以上より、現在の達成度はおおむね順調に進展している、と判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
上に述べたように初年度の実験からは、企業条件とソーシャル条件では、結合性の効果は変わらないが類似性の効果は異なることが示され、当初の仮説の方向性は誤っていないことが示唆された。 次年度は、この結果を受けて類似性要因と発信源要因とに絞り込み、2(類似性要因:高類似/低類似)×2(発信源要因:企業/ソーシャル)の被験者間デザインによる実験を基本設計として、要因の操作や質問項目の設定等に関して、より精緻化した形で実証実験を実施する計画である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2年目の実験計画については、以下のように研究費を使用する。 (1)実験用Webサイトの作成と修正:35万円 (2)会場調査の実施:95万円 (計)130万円 2年目の実験に関しては、初年度に作成した実験用Webサイトの8条件のうち、結合性に関する操作を削除した4条件(高類似×企業、高類似×ソーシャル、低類似×企業、低類似×ソーシャル)で実験を実施する。1年目は、実験刺激として被験者に架空の温泉についての情報を閲覧してもらう内容としたが、2年目は基本的な手続きは踏襲しつつ、異なる財を刺激として用いた実験とする予定である。また仮説の検証のための設問文や、要因操作のための誘導文などは、初年度の経験を踏まえて抜本的に修正し、より明白な効果が測定できるWebサイトに改善を図る。以上の修正作業に35万円を見込む。 会場調査の実査費用については、初年度は15サンプル×8条件であったが、1条件あたりのサンプル数が少なかったために、分析結果において有意な差が出にくいという問題点が残った。2年目は30サンプル×4条件として、この問題点を解決する。したがって総参加者数は120名で初年度と変わらないため、会場調査費としては初年度と同額の95万円を見積もった。
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Research Products
(6 results)