2012 Fiscal Year Research-status Report
消費者受容性を高める環境コミュニケーション制度のあり方に関する研究
Project/Area Number |
24530518
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
西尾 チヅル 筑波大学, ビジネスサイエンス系, 教授 (80241769)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 消費者行動 / エコロジー行動 / 環境コミュニケーション |
Research Abstract |
本研究はエコプロダクトの普及・浸透、さらには、消費者の価値観やライフスタイルを地球環境保全型へと変換させることに貢献しうる環境コミュニケーション制度のあり方を、環境ラベルを対象に検討しようとするものである。具体的には、課題1.エコプロダクト受容性の背後にある消費者行動の解明、課題2.既存の環境ラベリング制度の評価と消費者受容性の観点による課題の抽出、課題3.消費者受容性とその継続性を高めるコミュニケーションの要件と展開方法の検討の3つの研究について行う。 平成24年度は、課題1であり、本研究全体のベースとなる消費者の消費・選択行動を、①個人差要因(エコロジー関与や価値観等)と②状況要因(ムードや体験、対象との心理的距離等)の観点から考察した。特に、2011年3月に発生した東日本大震災の影響、すなわち、生存や安全への危機感や不安感、閉塞的なムード、被災(津波や原発事故等も含む)体験といった「状況要因」が、消費者の価値観や消費・選択行動にどのような影響を及ぼしたかについて解明を試みた。申請者が過去の実証分析を通じて特定化してきた消費者の価値構造とエコプロダクトの受容性の規定要因に関する研究に基づいて、仮説モデルを構築し、実証分析を通じて、その妥当性を検討した。その結果、震災直後は、生存や安全への強い不安感や危機感といったネガティブなムードにより、被災地域の消費者のエコロジー的価値観も低下するが、震災から1年以上経過し原発事故や被災地域の環境問題が台頭するにつれて、被災地の消費者のエコロジー的価値観は向上することが確認された。この成果は国際会議で発表し、現在、国際ジャーナルに投稿中である。また、消費者のエコプロダクトの選択行動については、現在、多面的に分析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で述べたように、本年度行うべき課題1について、関連する研究のレビューをし独自の仮説モデルを構築することができた。また、データ収集については、調査ボリュームや、課題2につなげるために調査を2回に分けて行うことにした。本年度はそのうちの1回目のみのデータ収集しかできなかった。しかし、研究成果を国際会議や国際ジャーナルに投稿する等、一定の成果を上げることができ、その点で「おおむね順調に進展している」と評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画では、課題1「エコプロダクト受容性の背後にある消費者行動の解明」に関する研究を、1回の大規模調査によりデータを収集し分析する予定であった。しかし、研究を進めていくうちに、次年度以降の研究課題である課題2や3へと発展させるためにも、環境コミュニケーションとの関係も含めて消費者行動のメカニズムを解明する必要があるという結論に至った。そこで調査を2回に分けて、まずは1回目の調査で消費者の価値構造や個人差要因に関するデータを収集し、消費者の異質性を特定化することにし、これを本年度実施した。2回目の調査は、1回目の分析結果に基づいて、特定化された消費者グループ毎に調査を実施し、環境コミュニケーションをはじめとする状況要因の影響を分析することを目的としており、次年度早々に実施する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記で述べたように、課題1に関する調査を、適切な調査対象者と導出し、状況要因を特定化するために2回に分けて行うことにした。そこで、本年度の研究経費の内、2回目の調査費用分を次年度使用額として残すことにした。なお、この調査は次年度早々に実施する予定であり、次年度はその上で、課題2に着手する予定である。そのため、申請時に計上した次年度分の使用計画については特に変更はない。
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