2012 Fiscal Year Research-status Report
日本企業の新興国市場におけるロジスティクス戦略構築に関する調査研究
Project/Area Number |
24530521
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
李 瑞雪 法政大学, 経営学部, 教授 (20377237)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | ロジスティクス / 物流産業 / 中国 / 戦略 / サプライチェーンマネジメント / 中国日系企業 |
Research Abstract |
2012年度では、まず新興国における物流産業の高度化は日本企業の新興国市場におけるロジスティクス戦略構築への影響を探るために、中国の輸送産業の高度化プロセスに関する実証研究の結果を深く吟味したうえで、学術論文「中国“貨運市場”の高度化プロセス:取引コスト理論に基づく一考察」(日本物流学会誌第20号掲載)をまとめた。本論文の最大の学術的貢献は、実態調査からの発見事実に基づいて“貨運市場”における取引コストの発生メカニズムを理論的に分析し、その分析結果を踏まえながら“貨運市場”の高度化プロセスを演繹的に導出している点である。また、この研究は新興国市場と先進国市場とではロジスティクス環境が大きく異なることを示唆した。 そこで、先進国市場におけるロジスティクス戦略に対する研究から生まれた既存のロジスティクス戦略の理論は、新興国市場の企業ロジスティクス戦略を説明できるのか、という問題意識をもって、ロジスティクス戦略に関する既存研究を包括的に整理した。そのうえで、これまで行ってきた中国日系企業のロジスティクス実態に対する調査(パイロット研究)からの発見事実によって、既存のロジスティクス戦略論の有効性と限界を考察した。そして、既存研究とパイロット研究を踏まえて、新興国市場のロジスティクス戦略を研究するための理論枠組みを提示している(「ロジスティクス戦略論の再検討:新興国市場におけるロジスティクス戦略の理論枠組みに関する予備的考察」『経営志林』第49巻第4号掲載)。 さらに、新興国市場での環境の制約とダイナミズム(市場成長率、競争度合、ロジスティクス産業の発達度など)を踏まえて、新興国市場での持続的な競争優位に寄与するロジスティクス戦略のあり方や主要な構成要素を検討してみた(「経営戦略とロジスティクス:新興国市場の視点から」中国物流学会2012年全国大会にて招待講演)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、新興国物流産業の高度化との関わりの中で、日本企業のロジスティクス戦略はいかなるダイナミズムを伴うかを深く析出し、新興国市場におけるロジスティクス戦略に関する理論構築を目指すことである。初年度では、既存のロジスティクス戦略理論に対する体系的なレビューを通して、新興国市場におけるロジスティクス戦略構築のメカニズムを解明するための理論フレームワークを提示することができた。また、世界最大の新興市場である中国で実施したパイロット調査から得た知見をまとめている。当初、中国日系企業のロジスティクスシステム実態に関する3回目のアンケート調査を実施する計画であったが、日中両国間の政治情勢の低迷による影響を受け、実施困難になったため、代わりに現地で個別企業に対する訪問調査という手法に切り換えると同時に、網羅的な文献サーベイに取り組んだ。その結果、今後の理論構築のための基盤整備が出来ていると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
2013年度では、前年度の研究で提示されている暫定的理論フレームワークを検証するために、新興国市場における日系企業のロジスティクス取り組みを観察・分析する作業を続けていく。この作業を踏まえて、ケーススタディ・アプローチによる理論導出法などの質的研究法を援用しながら、新興国市場のロジスティクス戦略構築をめぐるメカニズムの解明を目指す。ケーススタディの対象は中国日系企業にとどまらず、インドやブラジルなど他の主要新興国に広げていく予定である。 また、新興国市場の物流産業の高度化と、それによるロジスティクス戦略への影響という問題に関するこれまでの考察を学術論文か単著などにまとめる作業に積極的に取り組んでいく。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2013年度の研究費使用計画は以下の通りである。物品費200000円(パソコン、インク、ノート、紙など)、旅費745627円(現地調査、研究打ち合わせ、学会発表など)、人件費・謝金180000円(研究補助、論文校閲など)、その他50000円(会議費、通信費など)。総額は1175627円(前年度の繰り越し額275627円を含む)。
|