2013 Fiscal Year Research-status Report
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24530528
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
川野 訓志 専修大学, 商学部, 教授 (20244460)
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Keywords | 大規模小売店舗 / 地方自治体 / 出店規制 / 静岡市 |
Research Abstract |
本年度の研究は前半が文献資料の整理および文献調査の追加作業であり、後半は実地調査に向けた作業および実地調査となった。 前半の作業は過去の調査の延長上に位置づけられるが、後半は具体的にケースとなる地方自治体を選びそれに関連する資料を集中して広範囲に集め、当該自治体が大規模小売店舗について独自規制を実施するに至った状況を理解するようにつとめた。特に対象とした地域は、早い時期から罰則付き条例を制定した熊本県、3年に1回集中的に出店申請を受け付けるという独特な出店調整を行った松山市、出店凍結宣言を行い長期にわたって独自規制を実施した京都市、コンビニエンスストア等小規模店まで独自規制の対象とした静岡市であり、これら地域以外には北海道、山形県、仙台市、甲府市、東大阪市等も候補となった。 地方自治体関係者との電話やメールでのやりとりを通じて、静岡市と熊本県がヒアリング調査の候補地域として有力となった。その理由は、利用可能な形で資料が比較的多く残されていること、ヒアリング調査の受け入れに前向きなこと、当該地域の調査によって独自規制と自治体間の関係を理解するのに役立つという研究の枠組みに関わるような示唆が得られる見込みがあること、である。 事前の準備作業、特にヒアリング調査の日程調整等に手間取り年度末になってしまったものの、両地域でのヒアリング調査はきわめて実り多いものであった。特に特筆すべきなのは、静岡市における調査によって、1970年代から1980年代にかけて静岡市のみならず多くの市町村で独自規制が実施されており、こうした動きに対して静岡県の方は抵抗を示していたという事実が明らかになったことである。またその後の追加調査により他の市町村での規制状況についても明らかになりつつあり、自治体による大規模店規制の一つの典型例として調査を続ける必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度はきわめて不十分な成果しか収められなかったものの、本年度は地方自治体による大規模小売店舗規制を研究する上での枠組みを作り上げることのできる研究成果がヒアリング調査を通じて得られたためである。また、研究の方向性以外についても成果があったといえる。それは、ヒアリング調査等の手法がある程度確立できたことである。本研究の難しいところは、1970年代から1980年代という行政機関に勤める人間にとっては古い事項に関することであり、いかにしてそのような関心の少ないテーマに目を向けてもらい協力を取り付けるかということにあり、いくつかの解決方法を見つけだせたことは成果であった。あと行政組織以外では、商業者団体のヒアリングが有効なことを見つけだせたのも重要な発見であった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度得られた研究の枠組みと調査の方法に沿って、ヒアリング調査を中心として研究活動を行い、各地での地方自治体による独自規制の実体についての地検を積み重ねていく必要がある。 現在の課題は、当初予定していた個々の自治体の規制内容もさることながら、市町村間での相互作用、都道府県とその元にある市町村・特別区との影響の及ぼし合いである。前者については、なぜ、どのようにして独自規制を行うかということに直結している。周りの市町村が規制を行えば、自分たちのところに大型店が進出するため、それを避けるために追随したのか、それとも周りの似通った状況にある自治体が規制を行ったのでそれら自治体から規制を行う方法に関する情報を得て規制に踏み切ったのか、といった問題である。後者は、都道府県が独自規制に積極的なのか消極的であったのか、市町村や特別区が独自規制に積極的であったのか消極的であったのか、という組み合わせを考えると、4パターンに区別することができるが、このパターン構造が独自規制のあり方に大きく影響を及ぼしていたのでないかという仮説を考えており、これを検証しようと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
残額が生じた理由は2つある。 1つは、平成24年度の残額がかなり多かったことである。もう1つは、平成24年度の調査があまり進まなかったことから金額のあまりかからない都内での資料収集・整理に本年度前期は専念しており、後期はセメスター制の関係で講義負担が多いことと、ヒアリング調査先の選定さらに相手先との調整に手間取りあまり調査に出かけられなかったことである。 本年度でほぼヒアリング調査実施する体制は整っているため、今後予算消化は円滑にゆくものと考えている。 本年度前期の作業、後期のヒアリング調査によって、ヒアリング調査対象地域はかなり絞られている。 またどのように調査対象となる地方自治体にアプローチすれば、ヒアリング調査に応じてもらえる、といったノウハウについても蓄積ができてきているため、今後は、円滑に調査が進められるものと考えている。 具体的には、前期から夏休みにかけては、九州および北日本といった遠隔地、後期は関東近県、中部・近畿圏を調査対象とすることで、平成24年度からの予算残額も消化できるものと考えている。
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Research Products
(1 results)