2013 Fiscal Year Research-status Report
議題設定による共感の発生と広告コミュニケーション効果
Project/Area Number |
24530534
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
竹内 淑恵 法政大学, 経営学部, 教授 (40366828)
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Keywords | 広告コミュニケーション効果 / ソーシャルメディア / 共感 / 企業ブランドイメージ / ブランドへの態度 |
Research Abstract |
マーケティングの研究分野では、共感を測定する尺度の検討がほとんど行われていないため、社会心理学など他分野の先行研究をレビューし、共感測定尺度の妥当性をまず検討した。 ①測定尺度を「視点取得」、「結びつきの強度」、「ホモフィリー」の3次元で構成する、②共感を媒介変数として扱う、但し、共感の発生要因は、共感を介せずに直接的に受容や拡散、さらに、信頼や満足に影響する場合もあると仮定した上で、「共感発生によるコミュニケーション効果モデル」を構築した。 仮説検証のため、インターネット調査を実施し、Facebook(以下FBと略す)のファンページを自由に閲覧させ、反応を取った。その結果、次の知見が得られた。①共感を媒介変数として仮定したモデルと仮定しないモデルを比較した結果、潜在変数の少ない共感を仮定しないモデルの方がモデル適合度は高いが、FBの発信情報に対する評価、つまり、「エンターテイメント」、「メンバーからの好感度」、「重要性の認識」による「受容・拡散」、「信頼・満足」への総合的な効果は同程度であった。②共感を仮定したモデルでは、なぜ受容しよう、拡散しようと思ったのか、あるいは、なぜ信頼できる、満足できると思ったのかが明確になり、どのような点に力点を置けば、効果が高まるのかについて示唆を得ることができる。FBのファンページが楽しく、リラックスでき、退屈なときに活用できる内容であれば、また、登場人物の知識の豊富さ、提示された論点の意義、購買時に参考になるといった実用性など、情報としての価値が認められ、重要であると強く認識されるほど、共感を得やすい。③共感が得られると、受容・拡散、さらには信頼・満足にプラスの影響がある。中でも結びつきを強く感じるほど、受容や拡散への意向も高まる。 共感をブラックボックスにせずに、媒介変数として扱い、コミュニケーション効果を検証することが重要と言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2012年度には企業によるトリプルメディアの活用に着目し、事例研究を実施した。具体的には、健康、食の安全、女性にとって関心の高い美容などの、いわゆるメッセージ性が高く、論点が明確な情報を提示すれば、企業が発信する情報と言えどもコミュニケーション効果が得られることを、特定ブランドのテレビCMと当該ブランドのホームページ(以下HPと略す)、FBのブランド・ファンページを用いて検証した。その結果、テレビCMとHPでは論点提示によるコミュニケーション効果の一部が明らかになった。しかしながら、FBに関しては、アカウント保持者の人数など調査上の制約もあり、明確な結論を出すには至っていない。 そこで2013年度は、FBのブランド・ファンページに焦点を絞って、対象ブランド数も拡張し、さらに調査対象者もFBアカウント既有者とした上で、企業発のFBファンページでも、消費者の共感や受容は発生し、その結果、満足や信頼感が形成されるという点を明らかにすることを目的に研究を進め、上記の「研究実績の概要」に記載した通り、一定の成果と知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として、以下の3点を挙げることができる。 ①共感の測定尺度について:マーケティング以外の分野の先行研究の成果に基づいて検討し、「視点取得」、「結びつきの強度」、「ホモフィリー」という3つの概念を用いた。しかしながら、実証分析において、「視点取得」と「ホモフィリー」を2因子に分離できず、1因子として扱うことになった。また、「ホモフィリー」に関する質問の1項目として「主張していることは自分の考え方とは違う」を設定したが、ネガティブな反応が得にくいこと、似たような項目を設定しなかったことなどが原因となり、想定した反応を捕捉できず、この項目を除外してモデルを形成することになった。これらの点について、2014年度の研究では精査する。 ②企業ブランドイメージの影響について:2013年度の研究では、事前・事後のブランドイメージの比較分析にとどまったが、FBを活用した共感を得るコミュニケーションを展開することにより、企業ブランドイメージにどのような影響があるのかについても、明示的にモデルに組み込んで検証する必要があり、その点を2014年度の研究では解明する予定である。 ③同一企業が異なる個別ブランドのファンページを展開しているケースについて:企業ブランドと個別ブランドのイメージ形成に対して、どのような効果があるのかについても、検討する必要があると考える。
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