2012 Fiscal Year Research-status Report
リスク及び危機対応態勢の連係的整備のための手法構築に向けた実証的研究
Project/Area Number |
24530547
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
蟹江 章 北海道大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (40214449)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | リスク・マネジメント / 危機管理 / 不正リスク / 内部統制 |
Research Abstract |
今年度は,主として文献調査によって,過去に発生した事故,事件,不祥事などについてその原因や影響を分析し,リスク,失敗,危機といった本研究における重要概念の意義について検討した。リスクという概念は,組織等に不測の損失ないし思わぬ利益をもたらす要因,情報の質や将来事象の発生に関わる不確実性,あるいは漠然とした危険など多義的に用いられていることが確認された。 また,リスク対応と危機対応とに共通して重要な役割を果たすと考えられるリスク・コミュニケーションという概念を詳細に検討した。リスク・コミュニケーションとは,リスクによって影響を受ける者に対して,具体的なリスクの内容やそれが現実化した場合に予想される影響などについて適切な情報を提供することによって,関係者のリスクに対する正しい理解と適切な対応を促す行為である。重大なリスクや危機に直面した際に,冷静かつ適切な対応が取られるように,日常的に有効なコミュニケーションが図られる必要がある。 こうした概念的な分析・検討を背景に,具体的なリスクとして,金融市場に重大な影響を及ぼす会計不正リスクを取り上げ,監査における当該リスクへの対応について詳細な検討を行った。監査基準等の改訂によって不正リスクへの制度的な対応が明確化されたが,今年度の研究に即して,監査人の判断プロセスにおける不正リスクの考え方を概念的に整理したところである。 これらの分析・検討は,次年度以降本研究を進めていく上で基礎をなす概念を明確化するために重要なプロセスである。こうした基本的な概念や具体的なリスクの分析に着手できたことで,今後の研究の進展にとって一定の成果を得られたと認識している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
リスク,危機,失敗など本研究において重要な意味を持つ基礎概念をある程度明確化できたと考えている。また,日本学術会議の「リスクを科学する分科会」における議論に参加し,学際的なリスク等の考え方に触れたことで,これまでよりも幅広い視点でそれらの概念をとらえることができるようになった。 今年度は,具体的なリスクとして会計不正リスクに対する対応についての分析結果を提示したことで,分析の方向性を確認できたと考えている。また,日本学術会議のシンポジウムにおいて監査に係るリスクマネジメントについて報告する予定であるが,その準備過程でも本研究の課題に関連する研究成果を示すことができるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き文献調査による主要概念のより一層の明確化を図るとともに,企業の公表情報の検索・分析によって,具体的なリスク・危機対応事例を収集する。特に,リスク及び危機への対応に直接関わるBCPや不祥事に対する調査報告などについて重点的に情報収集する予定である。 また,リスク及び危機対応についての実証的な分析を行うための基礎作りとして,聞き取り調査にも着手したいと考えている。これまで内部監査や内部統制についての勉強会を通じて意見交換を行ってきた企業などに対して調査協力を要請する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
年度末近くに資料・情報収集によって執行する計画をしていたが,日程調整が不調となったことから,1回の旅費相当分の未使用額が発生したものである。
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