2012 Fiscal Year Research-status Report
わが国企業の業績測定システムの実践方法と効果との関係に関する研究
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24530548
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Otaru University of Commerce |
Principal Investigator |
乙政 佐吉 小樽商科大学, 商学部, 教授 (20379514)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 業績測定システム / バランスト・スコアカード / 書誌学的研究 |
Research Abstract |
本研究は、わが国企業の業績測定システムに関して、①業績指標をどのように利用しているのか、および、②どのように業績指標を利用すればどのような成果を得るのか、の2点について実証的に明らかにすることを目的とする。本年度においては、理論的枠組みおよび仮説命題の精緻化を研究活動の中心とした。 研究実績としては、まず、共著にて、「わが国バランスト・スコアカードに関する文献分析―欧米主要会計学術雑誌・実務雑誌との比較を通じて―」を執筆した。同論文は、査読の結果、学会誌である『会計プログレス』に掲載されている。 同論文では、バランスト・スコアカード研究の蓄積状況を明らかにするために、わが国主要会計雑誌、欧米主要会計学術雑誌、欧米主要会計実務雑誌に掲載されたバランスト・スコアカード(BSC)に関する研究を対象として文献分析を行っている。主要欧米会計雑誌との比較を通じた文献分析結果から、わが国のBSC研究を発展させる可能性を有する研究の方向性として、実践的考察に基づいた一般化可能な研究の推進、および、BSC実践のさらなる観察の2点を提示した。 次に、2012年9月に、日本原価計算研究学会第38回全国大会にて、タイトルを「公立病院の経営改革の実態と効果―マネジメント・コントロールの視点から―」として、共同で口頭発表を行った。 報告では、変化する経営環境に対応する上で抜本的な経営改革を迫られる組織が、組織に内在する「テンション」をどのようにして調整しながら、財務的な成果につなげようとしているのかを、医師による専門性の追求と組織目標へのコミットメントとの両立に迫られた、長崎県精神医療センターの事例研究を通じて明らかにしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、先行研究のレビューはもちろん、事例研究および計量研究を実施しながら、方法論的トライアンギュレーションを通じて研究目的の達成を図る。 本年度においては、先行研究のレビューを通じて、バランスト・スコアカード(BSC)に関する今後の研究課題を提示した。また、本来対象にすべき営利企業ではないものの、公立病院の事例研究から、①業績指標をどのように利用しているのか、および、②どのように業績指標を利用すればどのような成果を得るのか、の2点について考察を行った。本研究の初年度としては、順調に進展していると考える。 ただし、本研究を進めていく(最終的に実証研究を展開する)上では、さらに理論的枠組みおよび仮説命題の精緻化を図っていかなければならない。特に、戦略的業績測定システムをいかに操作化するかが重要になる。 また、事例研究を行うために、BSCと方針管理を併用する企業、BSCのみ、あるいは、方針管理のみを実践する企業、どちらも導入していない企業を選定する必要がある。本年度は、BSCと方針管理を併用する企業1社、方針管理のみを実践する企業1社に対してインタビュー調査を実施したものの、上記の理論的枠組みの精緻化を図るためにも、それぞれの分類においてさらに調査対象となる企業を探索しなければならない。 以上から、先行研究のレビューや事例研究から一定の成果を得たものの、理論的枠組みの精緻化および調査協力企業の選定に関して課題を残しているため、本年度の達成度は、「おおむね順調に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
第2年度もまた、先行研究のレビューを継続的に実施しながら、事例研究を本格的に展開することを通じて、理論的枠組みおよび仮説命題の精緻化を進める。事例研究は、BSCと方針管理を併用する企業、BSCのみ、あるいは、方針管理のみを実践する企業、どちらも導入していない企業それぞれの分類から、少なくとも2社以上を取り上げた上で、ケース間の比較を通じて進めていく予定である。 事例研究を実施しながら、必要なデータが質量ともに収集できた(理論的枠組みおよび仮説命題の精緻化を終えた)と判断した時点で、質問票の作成を開始する。現時点では、10月~12月の作成開始を計画している。質問票は、東証一部二部上場の製造業千数百社の経営企画室、もしくは、それに類する部署の長を対象として設計することになる。 なお、事例研究を通じて理論的枠組みおよび検証すべき仮説命題の精緻化を終えた段階で、中間報告として、国内の学会・研究会での成果報告を行いたい(9月~10月)。国内学会としては、日本会計研究学会もしくは日本原価計算学会が候補に挙げられる。国内の学会・研究会に積極的に参加することにより得られる、本研究に対する意見・コメントを通じて、理論的枠組みに関する構成概念の妥当性の確保を目指す。他の研究者からの意見やコメントを取り入れることにより、研究水準のさらなる向上が図られる。 理論的枠組みおよび質問票を完成させた時点で質問票調査を実施する(11月~1月)。質問票調査は、郵送にて実施するため、質問票さえ完成できれば確実に実施できる。ただし、調査協力企業に対して多大な負荷をかけるため、必要な項目のみを質問票に記載するとともに、簡潔明瞭な質問になるよう留意しなければならない。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
帳簿上、「次年度使用額」は2万円ほど残っているものの、3月末に研究打ち合わせのための出張旅費に使用しているため、実質的に残額はゼロである。したがって、次年度においては、計画通りに研究費を使用することになる。一つは、調査・資料収集のための旅費に加えて、テキスト分析ソフトが必要になる。二つに、質問票調査の実施に対しては、質問票の作成、印刷、郵送、回収に費用がかかる。また、回収した質問票のデータをエクセルに入力する際に、研究支援者への依頼が不可欠となる。三つに、仮説命題の統計的に検証する際には、研究の信頼性を高めるために最新の統計ソフト(アップグレード)が必要である。
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Research Products
(2 results)