2013 Fiscal Year Research-status Report
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24530556
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
岡崎 英一 福井大学, 教育地域科学部, 教授 (80233310)
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Keywords | 減損会計 / 利益操作 |
Research Abstract |
我が国における減損会計実務の現状と課題を明らかにしようとする本研究において,まず行うべきことは,減損会計実務に関するより詳細なデータベースの構築である。平成24年度及び25年度において,データベースの対象企業を東証一部上場企業全てに拡張するとともに,固定資産の特別償却についても新たに対象とすることにした。このデータベースの拡張により,「複数年次に渡って減損処理を分割している可能性」について,拡張したデータベースに基づき,追加的な検証を行った。それにより,より精緻な研究をおこなう基盤を作ることができた。 平成25年度においては,まず,本研究の実証分析の前提となる理論のモデルの再検討を行い,恣意的な減損処理と利益操作の関係について,理論的なモデルを用いて,減損を通じてどのように利益操作を行いうるのかという点に関する理論的な研究を行った。その上で,構築中のデータベースを用いて,「企業は特定の目的に基づいて、減損損失の金額を操作するために減損損失の分散計上を行っている」という仮説,その具体的な手法として「その手法として、資産・資産グループを利用している」という仮説について実証研究をおこなったが,必ずしも肯定的な結論を得ることはできなかった。これは,対象とする要因は営業外利益項目や特別利益項目だけでは不十分であり,それ以外にも減損処理と関係があると思われる他の要因も考慮する必要性を示唆するものと考えられる。とりわけ減損処理と資産区分方法や経営者の交代といった定性的項目が減損処理に与える影響をもたらす可能性についても検討の必要性が考えられるようになった。また上記にあわせて,これまでの分析結果についてもその頑健性の検討も行った。 なお,この研究結果については,平成26年度中に公表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
データベースについては,予定通り構築中である。ただ研究の進行によって,新たな項目をデータベースに組み込む必要が生じたため,26年度においては,これに重点的に取り組む予定である。また実証研究の前提となる理論モデルの再検討については25年度中にほぼ終了し,予定していた実証分析も一部を除きほぼ終了した。しかし仮説を証明するためにはまだ必ずしも十分な結果は得られていないため,26年度においては拡張したデータベースを元に,さらに検討を進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は,25年度の研究を踏まえ,「企業は特定の目的に基づいて、減損損失の金額を操作するために減損損失の分散計上を行っている」という仮説の妥当性を再検討するために,これまで採用してこなかった項目についてもデータを収集してデータベースの再構築を行い,最終年度の研究成果を得る基盤を確立する予定である。その上で,研究テーマである「複数年次に渡って減損処理を分割している可能性」とそれが利益操作の結果であるとの仮説について,最終的な結論を得て,仮に仮説の通りの結論が得られれば,どのような規定を設けることで恣意的な会計操作を防ぎうるかという点についても考察を加え,新たな会計基準に対する提案を行いたいと考えている。 この結果については,遅くとも平成27年度中には公表する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は概ね予定通り研究は進めているが,データベース構築について,研究者個人で十分に行うことができたたため,データベース構築等についての謝金を使用する必要がなく,また物件費についても26年度購入予定であるため,25年度については使用しなかった。 25年度の研究結果により,構築中のデータベースについては,さらに項目等を拡張する必要が生じたため,26年度において協力者をつのり,それに謝金に使用する予定である。また26年度に購入を予定している本研究の分析に不可欠な物品(統計ソフト等)に支出する予定である。また,研究成果の妥当性についての意見を求める等により今年度は謝金及び旅費を使用する予定である。
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Research Products
(1 results)