2012 Fiscal Year Research-status Report
財務会計の概念フレームワークの国際的コンバージェンスに関する研究
Project/Area Number |
24530557
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
山田 康裕 滋賀大学, 経済学部, 准教授 (20335160)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 会計制度 / 相互主観性 / デュー・プロセス |
Research Abstract |
本研究は,制度形成の心理的側面に着目し,会計制度の形成に関わる問題,とりわけ国際会計基準審議会による国際財務報告基準の設定上の問題を考察することを目的としたものである。 制度は,主体の主観が共有されることによって形成される。このような制度の相互主観の形成のされ方,換言すれば主観の共有のされ方は,国によって差異がある。たとえば,わが国においては,法は守らなければならない義務として観念されている。これに対して西洋においては,法は自らを守る権利として観念されている。 日本においては義務本位の規範意識であるが故に制度は与えられるものと捉えられ,政府などによって定められた規範を受動的に共有することによって相互主観が形成されると考えられる。これを会計制度に敷衍するならば,わが国では,基準設定主体が設定した会計制度を受け入れ,それを遵守することに専らの関心が向けられると解釈されるのである。これに対して,西洋では権利本位の規範意識であるが故に制度は自ら作るものと捉えられ,自らの規範を他者と共有するように能動的に働きかけることによって相互主観が形成されると考えられる。これを会計制度に敷衍するならば,西洋では,会計制度の設定プロセスに積極的に参加し,自らに有利な制度を実現することに専らの関心が向けられると解釈されるのである。 概念フレームワークや会計基準を設定する上でのデュー・プロセスにおけるコメント・レターは制度を権利と捉える思考を前提としており,義務と捉える思考をもつ国に対してはうまく機能しない恐れがある。かかる問題を解決するためには,制度を義務と捉えるのではなく権利と捉えるように発想の転換をおこなうこと以外に,義務と捉える国の意見を聞く機会を設けること(公聴会や個別交渉)が考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究計画では,「意思決定支援目的に受託責任目的を包摂させることの意義を明らかにすること」を課題としていたが,かかる各論の検討に取り掛かる前に,もっと広い視点からの検討すなわち総論的な検討の必要性を感じた。このため本年度は,概念フレームワークの形成も含む制度形成の在り方についての検討を行ったため,当初の各論的な課題を満足に検討できなかったという点では遅れているといわざるをえない。 とはいうものの,本年度に行った総論的な検討は,平成26年度に行う予定であった研究を先取りしたものであると位置づけられるため,3年間全体としては遅れているとまではいえない。 ただし,今年度の検討が総論的なものに終始したため情報パースペクティブの考察が思うように進まず,この点では少し遅れているといえる。 以上を勘案し,「やや遅れている」との評価を下した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は,第1年度の総論的な検討をふまえ,当初の計画では第1年度の課題として位置づけられていた「意思決定支援目的に受託責任目的を包摂させることの意義を明らかにすること」に取り組んでいきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費の大半は書籍の購入に充てられるため,当初の計画通りに執行していく予定である。
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Research Products
(2 results)