2013 Fiscal Year Research-status Report
企業間関係におけるディスクロージャー行動に関する理論的・実証的研究
Project/Area Number |
24530558
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
椎葉 淳 大阪大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (60330164)
|
Keywords | ディスクロージャー / 企業間関係 / 資本市場 / 製品市場 / 株式所有 |
Research Abstract |
本研究の目的は、企業間関係におけるディスクロージャー行動について、製品市場と資本市場への影響に分けて理論的・実証的に考察することにより、ディスクロージャー研究の進展に貢献することである。本研究は3年間の期間を予定しており、2年目である2013年度は、理論研究を中心に研究を進展させた。 まず製品市場への影響については、第一に製品市場のディスクロージャーの基本文献であるDarrough (1993)をレビューし、経済的直観を解説した共同論文を執筆し、「製品市場における企業の情報開示行動-Darrough (1993) のレビューと考察-」(三輪一統・呉重和との共著)(『大阪大学経済学』第63巻第2号,pp. 91-118)として公表した。第二に、企業間関係におけるサプライヤー企業のディスクロージャー行動を分析した論文"Optimal Disclosure Policy for Supplier Firms"(中條良美との共著)をEighth Accounting Research Workshop (University of Basle)において共同報告した。特に、メーカーによるサプライヤーの株式所有によってディスクロージャー行動が異なることを明らかにした。 次に、資本市場への影響については、セグメント情報の開示の影響を理論的に考察したWP "Voluntary Disclosure and Value Relevance of Segment Information"(村上裕太郎との共著)を海外学会3か所で共同報告した。たとえば、国内利益と海外利益を比較したときに、市場規模とリスクの観点から、海外利益が市場において低く評価されることなどを理論的に示した。この結果は、各セグメントが別企業であるとした場合、企業間関係におけるディスクロージャーの分析と理解できる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
まず理論パートについては、製品市場へのディスクロージャー、および資本市場へのディスクロージャーの基本モデルを拡張し、企業間関係のある状況でのディスクロージャー行動についてのモデル分析を展開できた。製品市場へのディスクロージャーについては、レビュー論文を公表した。また、サプライヤー企業の開示行動について株式所有の影響を考慮して分析したWPを海外のワークショップで報告した。さらに、資本市場へのディスクロージャーについても海外学会3か所で報告した。以上のことから、理論パートについては概して順調に進展していると考えている。 次に実証パートについては、有価証券報告書において開示されている主要顧客企業(開示府令第3号様式によって開示が要請されている連結総売上高10%以上を占める販売先企業)のデータ入力を行い、5年分のデータが得られた時点で、主要顧客企業を有するかどう かによってディスクロージャーの水準が異なるかについて、実証分析を進めることが当初の予定であった。しかしながら、財務データとリターンデータの更新に時間がかかり、現在までに実証分析を開始できていない。このことから、実証パートについては予定よりも遅れている。
|
Strategy for Future Research Activity |
理論パートの研究のうち、製品市場への影響を考察する研究は、サプライヤーのディスクロージャー行動を分析した"Optimal Disclosure Policy for Supplier Firms"(中條良美氏との共著)を改訂し2014年度中に海外ジャーナルに投稿する。また、製品市場において競争を行う企業が報酬契約を開示したときの影響を考察した"The Effect of Compensation Contract Disclosure on Executive Behavior"(呉重和との共著)についても2014年度中に海外ジャーナルに投稿予定である。資本市場への影響を考察する研究である "Voluntary Disclosure and Value Relevance of Segment Information" (村上裕太郎氏との共著)と題するWPは、可能であればWPとしてSSRNなどで公表する予定である。 実証パートについては、現時点では主要顧客企業データ7年分、財務データ、リターンデータが分析できる状態でそろえられており、実証分析を行う準備はできている。予定よりも実証分析が遅れていることから、理論研究よりも優先して進めていく予定である。なお、主要顧客企業データを最近のデータまで入手する作業についても、アルバイトを利用して、引き続き並行して行う予定である。
|
Research Products
(5 results)