2012 Fiscal Year Research-status Report
「緩結合」ネットワーク分析と戦時統制経済下の会計制度
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24530559
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
清水 泰洋 神戸大学, 経営学研究科, 准教授 (80324903)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野口 昌良 神戸大学, 経済経営研究所, 教授 (70237832)
中村 恒彦 桃山学院大学, 経営学部, 准教授 (50368388)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 会計史 / 日本 / 会計規制 |
Research Abstract |
本年度は,日本における会計史の実証的研究の事例研究として,昭和期の三菱重工株式会社の航空エンジン工場における会計管理の研究を行った。当該工場に関する研究は,すでにいくつか存在しているが,会計的な達成について着目した研究は多くはなかった。そこで,本研究課題においては,陸海軍がエンジンを調達する際の原価データに着目し,インフレーションが進行する中にもかかわらず,エンジンの重量あたり単価を削減することができたという原価面での進展を明らかにした。さらに,このような原価の削減が,軍からの強圧的な権力によるものではなく,むしろ私企業による原価削減努力の結果であることを示した。 私的な努力による原価削減の達成については,理論的にも大きな意味を有している。すなわち,原価削減の達成方法は軍からの強要によるものではなかった。原価データを軍とは共有するものの,軍は別企業の経営活動にまで介入することはできなかった。ここに会計データを通じた利害対立の解消構造が見られる。現時点では完全に理論的な敷衍が行われてはいないが,会計を通じた緩やかなネットワークが軍と民間企業の間に構築されていたことを示す事例であると考えられる。 本年度は,当該研究実績を,2012年7月にイギリス・ニューカッスルにおいて開催されたWorld Congress of Accounting Historiansにおいて研究発表を行い,これをもとに雑誌に投稿を行っている。現在,当該論文に対するコメントが返送され,改訂作業を行っている。 加えて,企業と政府の会計を通じた関係に関する事例として,終戦直後の日本の石炭会社の企業解体に関する事例研究をすすめ,当該論文を2013年7月に開催されるAPIRA Conferenceで報告予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
すでに国外の学会で研究発表を行い,それが論文の投稿となっているため。ただし,採択に至るかについては現時点では不明であるため,おおむね順調に進展しているという判断となった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後においても,日本企業と政府の関係を示す事例を積み重ねることを主な活動とする予定である。事例の積み重ねにより,戦間期に形成された企業統治機構および政府企業間関係などとの連続と断絶の識別が十分になされておらず,結果として,戦時については陸海軍による強制的な経理統制のイメージが強調され,その前後の時代と断絶された異質な特殊戦時体制として理解されがちであるという現状について,新たな歴史像をもたらすことを目標とする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度についても,海外の学会において積極的に研究成果の発表を行う予定である。そのため,研究費の使用計画としては,国外旅費および論文の校閲を依頼するための謝金に多くの部分が充当される予定である。
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