2012 Fiscal Year Research-status Report
株主優待制度の財務情報の株価説明力に与える影響に関する実証的研究
Project/Area Number |
24530562
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
松浦 良行 山口大学, 技術経営研究科, 教授 (70274149)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 株主優待 / 個人投資家 / ファンダメンタル分析 / 資本市場 |
Research Abstract |
本研究は、株主優待の株価形成への影響を分析するために、課題1)株主優待制度の理論的検討と導入・撤廃の要因分析、課題2)一般投資家の投資意思決定における株主優待と財務数値の役割に関する分析、課題3)株主優待導入企業の株価分析、を検討する事を目指している。それぞれについて活動内容を以下に示す。 課題1については、計画書記載の通りこれまで理論的な分析枠組みがないために、二つの観点から文献レビューを行い意義を検討した。一つはマートンによって提唱されたInvestor recognitionの証券価格形成に与える影響に関する先行研究をレビューした。今ひとつの観点は、配当や自社株買い等、いわゆる配当・分配の顧客効果の中でも、特に個人投資家と分配に関するレビューを行い、その文脈の中にいかにして株主優待制度を位置づけるかについて検討した。 課題2については、株主優待を重視する人とそうでない人の投資意思決定に至るまでの流れと、意思決定における株主優待制度のウエイトを調査するために、グループインタビューを行った。今回は、財務数値に関してある程度知識がある実務家に絞ってインタビューを実施し、特に株主優待によるリターンを配当と同義にとらえるかどうかが、株主優待に対する姿勢によって影響を受けるかどうかを検討した。ターゲットの設定にも影響されているが、結果としては、優待の重視とは配当と同義にとらえると言うことではなく、ファンダメンタルを所与とした条件付き重視である傾向が強いことがわかった。これに関しては、次年度以降異なる対衣装に対してアンケート調査を実施することで補完していく。課題3については、手入力によって株主優待に関するデータベースを構築している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上に述べたように、平成24年度の主たる活動は、文献レビュー、個人投資家向けグループインタビュー、データセットの構築であった。データセットの構築は、制度自体の多様性から多くの判断を必要としたために、予定よりも若干遅れ気味であるが、遅くとも平成25年度の第一四半期には完了する。他の活動は当初の計画通り実施しているので、研究期間内の達成目標との関連で言えば、深刻な影響は存在しないので、順調に進展していると判断する。 一点当初予定から変更したのが、株主優待実施企業向けのヒアリングである。これに関しては、今後の継続的なコンタクトや情報収集のために、より所属機関周辺地域の上場企業をターゲットとして実施することにし、そのために地元証券会社に協力を求め、条件付きではあるが快諾を得た。この結果、限られたサンプルではあるが、個人株主の拡大という目的に関しては共通しているのものの、その株価形成に対する影響については必ずしも明確に認識しているわけではないことがわかった。今後は、このネットワークを活用して、特に株主優待内容の相違と株主構成ひいては株価形成の関係について、より詳細な検討を行うことを目指している。この変更によって、より深く株主優待の意義について検討することができるようになったと判断しているので、研究の進展・深化という意味では積極的な影響があると判断しており、これも研究の進捗の順調さを補強していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
全体的に言えば、おおむね当初の予定通り研究が進展しており、また本テーマの研究に関して研究計画の見直しにつながるほどの重大な成果は、関連研究領域において観測されない。したがって、当初計画から特段の変更はない。 申請書においては、平成25年度以降の活動として、個人投資家向けウエブアンケート、IR実施企業向け郵送アンケートおよび、優待データベースを活用した実証分析、および論文作成を記載していた。このうち、企業向けアンケートに関しては、地域の株主優待実施企業および新興市場上場企業とのより密接なコミュニケーションに替えることで分析を行う。この変更は、研究目的の一部変更ではなく、研究資金のより効率的な活用を目指した変更である。その理由としては、本研究の目的を達成するためには、他の機関が実施しているIRに関するアンケート調査を超えて相当詳細なアンケートを企業に求めることになるため、回収率がきわめて低くなる恐れが高いこと、さらに株主優待の導入検討・撤廃などの意思決定に関する調査は、アンケートによるよりも継続的なヒアリングによった方が、理論構築と仮説検証という観点から見て、有益な情報が得られると判断したからである。 さらに、世界的にも個人投資家確保に関心が高まりつつあることから、本研究の価値を高めるためにも、一部テーマについては外国人研究者との共同研究として実施するべく体制を構築する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
以上を踏まえて、平成25年度の研究費の使用計画は、以下の通りである。まず、最も支出額が大きいのは、個人投資家向けのウエブアンケート調査であり、予定しているサンプルサイズを念頭に置いて調査実施会社と議論した結果、約80万円を要すると見込まれる。その他は、株主優待データベース構築のための研究補助員の雇用費であり、昨年度の進捗状況を鑑みて、約20万円程度必要であると考えている。最後に、アンケート実施に向けての打ち合わせと株主優待実施企業およびその他新興市場上場企業IR担当者との打ち合わせ等で国内出張費を必要とするが、これに20万円程度予定している。
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