2013 Fiscal Year Research-status Report
株主優待制度の財務情報の株価説明力に与える影響に関する実証的研究
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24530562
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
松浦 良行 山口大学, 技術経営研究科, 教授 (70274149)
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Keywords | 株主優待 / 個人投資家 / 資本市場 / 企業評価 |
Research Abstract |
本年度は、研究実施計画では株主優待実施企業に対して、株主優待の効果の認識に関するアンケートを実施することとしていたが、アンケート委託先調査会社との協議の結果、企業向けアンケートで有効回答数を得るためには多額の費用がかかることまた申請者本人が直接ヒアリングを実施した方が望ましいと判断し、こちらについてはアンケートではなくヒアリングにアプローチを変更の上、数社のIR実施企業向け郵送アンケートおよびデータ分析担当者に対してヒアリングを実施した。その結果、本研究の関心である株主優待の企業価値に対するインパクトを十分トラッキングしている企業は現時点においては確認できていない。 昨年度の個人投資家に対するグループインタビューの結果を踏まえて、1000名をターゲットとした株主優待に関する個人投資家の意識に関するアンケート調査を実施した。個人投資家も、突き詰めればキャピタルゲインとインカムゲインの最大化を目指していることに疑いはないが、投資意思決定においてどの指標を特に重視しているかを調べるためである。しかし、単純に主要指標ひとつひとつの重要性について質問したのでは、相対的な位置づけについては分からない。この点は、株主優待がそこで、このアンケートでは意思決定要因の相対的な効用値をはかるためのコンジョイント分析を実施するべくアンケートを設計した。アンケートは、2014年3月に実施し、当初の予定通り1000を超える回答を得て現在分析を実施している。この結果は、本年9月の日本会計研究学会およびいくつかの国際学会にて発表予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上でも述べたとおり、アンケート対象を株主優待実施企業から個人投資家を変更したが、これは研究費の有効活用という観点から、費用対効果を降下した修正である。これにより、当初予定した以上のデータ分析を実施することが出来ることになり、このデータ整理と分析に当初予定していた時間を要することになっている。これにより、昨年度に公表予定であった、財務データを利用した株主優待の価値関連性研究の成果公表が当初よりも遅れることとなっているが、すでに分析は完了していること、また本年度のアンケート結果を先に公表することが、価値関連性研究の成果の価値をより高めるとの判断によるものである。そして、本研究期間終了時までには公表することが十分可能であるので、おおむね当初の予定通りに作業は進行している上に、内容面でもより充実したものになっていると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度における中心的な活動は、過去二年間の研究成果を積極的に発信していくことである。株主優待研究はIRのコストベネフィットを価値関連性の観点から明確に分析できる貴重なサンプルであること、またその検討は日本のデータによってしか現実的に出来ないことなどを踏まえ、この貴重なデータを国際的に発信していくために、研究の一部をかねてより共同作業を実施しているマレーシアの大学との共同研究とし、今年度はアジアでの成果発表を戦略的に実施していく予定である。
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