2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24530565
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
吉田 和生 名古屋市立大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (30240279)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 退職給付会計 / 未認識債務 / 即時認識 / 年金資産の運用 / 実証分析 |
Research Abstract |
近年、退職給付債務の未認識項目にかかる会計は即時認識に変更されたり、あるいはその検討が行われている。本研究では遅延認識から即時認識への変更による影響を明らかにし、それに関連する企業の経営者行動を実証的に分析することを目的としている。2001年3月から導入されたわが国の退職給付会計では、数理計算上の差異等について遅延認識が認められている。これは当時の国際的な基準に合わせたものであるが、近年、即時認識へシフトしている。遅延認識から即時認識への変更によって、脚注情報であった未認識債務はB/SやP/Lに計上されることになる。そのため、この問題は開示v.s.会計認識として捉えられ、会計基準の設定における重要なテーマの1つである。本研究では、1)即時認識への変更による財務諸表や株価への影響について明らかにし、2)そこから生じる企業行動(退職金・年金制度の改正や運用政策の変更)について実証分析を行う。 アメリカ会計基準を採用している日本企業をとりあげて分析した結果、2007 年3月期からの即時認識の導入後、負債比率が高い企業ほど債券運用割合が高くなっている。また、即時認識の導入後、運用利回りが低い企業ほど債券運用割合が高くなっている。これらはレベルの分析で得られた結果であるが、増減の分析では、負債比率と年金資産規模について予想に整合する結果が得られている。 わが国においても即時認識が近く導入される。この分析結果を認めるとすると、即時認識への変更により、企業の年金資産の運用政策が変更されると予想される。株式運用から債券運用へ変更が行われるであろう。これまで、遅延認識であったうえに、年金資産の運用状況が開示されていなかったため、高い運用益を目的として株式に偏重したポートフォリオが組まれてきたとされている。即時認識への変更により、運用ポートフォリオの適正化が達成されると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の課題である先行研究のサーベイを行い、それに基づき検証仮説の提起を行った。この検証仮説は今後、検討されて、修正される可能性もあるが、アメリカの会計基準を採用している日本企業についてパイロットテストを実施した。その分析結果については、ディスカッションペーパーとしてまとめて公表している。
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Strategy for Future Research Activity |
パイロットテストの結果をうけて、平成24年度に設定した仮説の再検討を行う。また、分析期間を拡大してより多くのサンプルを用いて、パイロットテストの再検証を行う。分析結果の頑健性などに関するチェックを行う。 退職給付会計における即時認識への変更によって、企業にどのような影響が生じており、また経営者はどのように対応しているのかを解明するため、上場企業にアンケート調査及び聞き取り調査を実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、わが国の企業における影響やその対策について調査を行う。前年度において、その準備作業を進める予定でいたが、それが後送りとなり、次年度に行うことになった。そのため、前年度研究費の一部を次年度分として使用することになった。 このアンケート調査のほか、次年度においては企業の対応に関する市場の反応を分析するため、株価や社債のデータを使ってパイロットテストを行う予定である。そのため、株価や社債の価格データを購入することを計画している。
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