2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24530589
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
阪 智香 関西学院大学, 商学部, 教授 (10309403)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大鹿 智基 早稲田大学, 商学学術院, 准教授 (90329160)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | カーボン会計 / 企業価値 |
Research Abstract |
2012年度の研究実績の内容は、主に次の2つである。 1.わが国の上場企業を対象に、2006年から2008年までのCO2排出量データおよび排出削減対策に関する企業の情報開示データを用いて、それらが企業価値に及ぼす影響について実証的な分析を行った。また、CO2排出量の多寡によって、企業の排出削減対策に関する情報開示が企業価値に及ぼす影響が変化するのかどうか(CO2排出量が多いほど、企業の排出削減対策に関する情報開示が企業価値に与える正の効果が大きくなるかどうか)についても追加的な分析を行った。 さらに、2009年・2010年における企業のCO2排出量、排出削減対策に関する情報開示内容、情報開示に関する充実度等に関するデータの収集・入力を行った。これらのデータは、期間を拡張して、CO2排出量やその情報開示が企業価値に及ぼす影響を確認するために用いる。 2.企業の各環境対策活動が企業価値に及ぼす影響の経路分析についての研究を行った。具体的には、サステナビリティ・バランスト・スコアカードの戦略マップを用いて、企業の各環境対策活動(環境方針、環境部門・役員の設置、グリーン購入・調達、環境マネジメントシステム、環境監査、環境会計、廃棄物削減、環境保全コストの投入、環境ラベル等)と、環境負荷の削減(エネルギー投入量の削減、CO2排出量の削減等)および企業価値の向上(エネルギーコストの削減、営業利益率の改善等)に、どのような関連があるかの経路を分析するための実証分析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.企業の環境実績と財務実績の関連について扱った先行研究は数多く存在するが、それらの先行研究の多くは、環境実績と財務実績の直接的な関連を調査するものであった。サステナビリティ・バランスト・スコアカードを用いることによって、企業の各環境対策が企業価値の向上にどのような影響を及ぼしているかについての経路分析を行ったのは、本研究が最初であり、重要な成果であると考えている。 2.企業のCO2排出量データと企業価値の関連を扱った先行研究では、企業のCO2排出量データを企業の開示情報から入手しており、分析にあたって内生性の問題をはらんでいた。本研究では、CO2排出量について温暖化対策法による国(環境省)の開示データを用いることによって、内生性の問題をクリアーすることができた。また、先行研究では、環境負荷データとして化学物質排出やSOxなどが扱われており、排出企業や業種が限定されることから、分析対象企業も限定されていた。それに対して、CO2はすべての業種・業態の企業が事業活動に伴い排出することから、分析結果の一般化が可能である。さらに、CO2排出量の多寡によって企業の気候変動対策に関する情報開示が企業価値に及ぼす影響が変化するかどうかという点は、これまで分析されておらず、最初の研究成果であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
1.企業の潜在的カーボン債務・資産とその変動が企業価値に及ぼす影響に関する実証分析:潜在的カーボン債務・資産の推定に用いるデータの収集・入力、先行研究の調査、仮説の導出、潜在的カーボン債務・資産の推定モデルの検討、データ分析について遂行する。 2.主要国・地域におけるCO2排出や排出削減対策に関する情報開示が企業価値に及ぼす影響に関する実証分析:各国の環境法規制、CSR報告ガイドライン等の調査、各国・地域の企業のCO2排出データの収集、CSR報告書等における気候変動関連情報開示調査(データ収集・入力)、先行研究の調査、仮説の導出、分析モデルの検討、データ分析について遂行する。 3.長期的指向の企業価値創造を支える会計・財務報告のあり方に関する研究:資本市場の短期指向の行き過ぎが懸念されている中、企業の長期的指向の価値創造を支える会計・財務報告が必要とされている。日本は長寿企業数で圧倒的な世界一位を誇ることから、長寿企業の会計行動を分析し、長期的指向の価値創造を支えてきた会計・財務報告のあり方を明らかする。その手始めとして、日本の創業100年以上の長寿上場企業を対象とし、多様な財務報告の質(収益性・安定性やそれらの持続性、利益マネジメントの程度等)を分析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.研究報告のための外国・国内旅費 2013年6月にルーマニア・ブカレストで開催されるIAAER(The International Association for Accounting Education & Research)学会に参加し、研究報告を行う予定(報告accept済)。2013年7月に神戸で開催されるAPIRA(Asia Pacific Interdisciplinary Research in Accounting)学会に参加し、研究報告を行う予定(報告accept済)。2013年8月にアメリカ・アナハイムで開催されるアメリカ会計学会に参加し、研究報告を行う予定(報告accept済)。2013年9月に名古屋で開催される日本会計研究学会全国大会に参加し、研究報告を行う予定(報告申込済)。なお、研究代表者(阪智香)・研究分担者(大鹿智基)は、2012年11月にアジア太平洋管理会計学会(中国・厦門)に参加する予定であったが、日中関係の悪化に伴い出張を取りやめた。当該出張に充てられていた2012年度の直接経費は、2013年度への繰越金とし、2013年6月のIAAER(ルーマニア・ブカレスト)および2013年8月のアメリカ会計学会(アメリカ・アナハイム)での研究成果報告のための外国旅費の一部に充当する予定である。 2.調査データ収集・入力にかかる人件費 各国のCSR報告書等における気候変動関連情報開示の調査を実施し、データ収集・入力を行うため、作業者に支払う人件費が発生する。 3.研究打ち合わせのための国内旅費 研究打ち合わせ(東京または大阪)のために国内旅費が発生する。
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Research Products
(3 results)