2012 Fiscal Year Research-status Report
日本型自助組織「断酒会」による社会啓発活動の変遷―薬物乱用対策から自殺予防へ
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24530595
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
眞崎 睦子 北海道大学, メディア・コミュニケーション研究院, 准教授 (40374631)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 自助組織 / self help group / gateway drug / Alcoholics Anonymous / 自殺 / 問題飲酒 / 酒害 / 薬物教育 |
Research Abstract |
自助組織(自助グループ、self help group)とは、共通の問題を抱える個人及びその家族が自らの意思で参加し、「言いっ放し・聞きっ放し」という特徴的なコミュニケーションにより問題の解決あるいは緩和をはかる団体である。1930年代にアメリカのアルコール依存症者の間で始まり、欧米を中心に様々な問題を抱える当事者たちの間で形成されるようになった。本研究では、日本型の自助組織として発展をとげてきた「断酒会」の社会啓発活動のあり方及びその変遷を探る。 断酒会は1960年代に組織されて以来、アルコール依存症者の回復を支援し、「酒害」を未然に防ぐための社会啓発活動を行ってきた。これらの活動に新たに加わったのが「自殺予防」の観点である。日本国内の自殺者数が年間約3万人で推移している状況において、問題飲酒と自殺の関連は無視できない課題となった。それを受けて各地の断酒会が自殺予防のための社会啓発活動を展開している。 研究代表者は2002年から無記名アンケート「飲酒に関する大学生の意識調査」等を行っているが、国際学会では「(当該の調査では)半数以上の大学生が、酒が薬物であることを認識していない」、「アルコール依存症者らによる自助組織について知るものがほとんどいない」という調査結果に驚きの声があがる。このことも本研究課題に取り組むきっかけとなった。 これまでの調査を続行し、今日の日本社会における薬物教育に何が欠落しているのか、何が必要とされるのかを分析する。また、断酒会に通うアルコール依存症回復者及びその家族により語られる「体験談」(断酒会では、参加者の語りを「体験談」と称する)から、高度情報社会と呼ばれる現代の日本社会において、飲酒という行為周辺の諸問題をあぶり出し、その影響下で、断酒会による社会啓発活動がどのような変遷を遂げていったのかその背景を明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究計画通り、国際学会発表、国内における資料収集、そして教育活動を行った。 国際学会発表についてはカナダ、ブリティッシュ・コロンビア大学において開催されたTwelfth International Diversity in Organizations, Communities and Nations Conferenceにおいて発表を行った(What is Danshukai? On “Japanese Alcoholics Not Anonymous”)。 国内においては、全日本断酒連盟北海道ブロック北見大会(9月)、大分県断酒連合会(11月)、札幌連合断酒会(10月・11月)、宮城県断酒会(2013年2月)、第34回 関東ブロック研修会(神奈川)/かながわ市民公開セミナーにおいて断酒会主催の講座・研修会等に参加し、資料収集を行った。また、長崎県五島列島有川断酒会(2013年3月)、長崎県五島列島五島断酒会(2013年3月)において調査・資料収集を行った。 教育活動としては北海道大学主題別科目「社会の認識」講義題目「社会問題としての飲酒」を開講・担当し、自助組織の実際について分析を加えた。 研究・教育活動に並行して関連のテーマについての講演を行い、その際、アンケート調査を行った[全日本断酒連盟四国ブロック大会「断酒会にたどりついたあなたへ」4月香川県高松市]など)。
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Strategy for Future Research Activity |
国内各地の断酒会における資料収集に加えて、今後、特に平成25年度には北米での資料収集、可能であれば国際学会発表を予定している。 国際学会についてはThird International Conference on Aging: An Interdisciplinary Conference(開催地、イリノイ州シカゴ、2013年11月)を予定している。 自助グループAlcoholics Anonymousのイベント、52nd Annual Hawaii Convention(2013年11月)に参加し、日本の自助組織に影響を与えた北米の自助組織について資料収集を行う。また、Alcoholics Anonymousの家族会にあたるAl-Anonについて現地(イベント開催地)で調査を行う。 並行して、北海道大学主題別科目「社会の認識」講義題目「社会問題としての飲酒」を開講・担当し、自助組織断酒会について資料収集を行い分析を加える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
「該当なし」
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