2013 Fiscal Year Research-status Report
社会学的リスク論による「リスクガバナンス」モデル構築のための学説史的・理論的研究
Project/Area Number |
24530596
|
Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
小松 丈晃 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (90302067)
|
Keywords | 社会学的リスク研究 / 社会システム理論 / 東日本大震災 |
Research Abstract |
平成25年度の研究計画に基づき、まず、社会システム理論および社会学的リスク研究の知見を基盤にしながら、(1)学会報告を一つ(報告「非知(Nichtwissen)をめぐる争いと科学/政治」(東北社会学研究会大会シンポジウム「東日本大震災以後の社会理論の課題―リスクと機能分化」)、2013年10月19日(於、東北大学))、および第86回日本社会学会大会(於:慶應義塾大学)でのテーマ・セッション(研究活動委員会企画)を一つ企画・実施した(テーマ「リスク社会論再訪」)。前者においては、東日本大震災において典型的に顕在化した「非知」の問題により、科学と政治の有り様を見直すべきであることを指摘し、後者においては、東日本大震災後の日本において「リスク社会論」を見直してゆくべきさいの基本的な視座を得るべく企画した。(2)学術論文としては、「科学技術のリスクと<制度的リスク>」東北社会学会『社会学年報』42号(特集「社会問題としての東日本大震災」)5-15頁、および、「科学技術の「リスク」と組織―3.11以後のリスク規制に関するシステム論的考察―」科学社会学会『年報 科学・技術・社会』22、89-107頁を公刊し、東日本大震災を念頭におきながら、各システム固有のリスク(「制度的リスク」)にリスク変換されることで生じる深刻な現象について論じた。なお(3)社会システム理論の彫琢のために、N.ルーマンの政治論の集大成と目されるNiklas Luhmann, Die Politik der Gesellschaft,Shurkamp,2000(『社会の政治』)を単独で翻訳し、法政大学出版局から刊行した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度に遂行予定の研究計画のうちシステミック・リスクという新たなリスク現象については概ねこれまでの学会報告ならびに論文において明らかにしてきたところであり、また、平成25年度の研究計画であった社会システム理論と新制度派との接点を探る作業も、これまでの論文で明らかにできたものと思われる。あわせてこの作業は、リスクガバナンスのモデル構築のための基礎的作業にも資するものであると言える。さらに、ここ2年間の研究課題の一つであった機能的分化という近代社会の基礎構造の変容に関する考察も、著書を公刊する中で、一部、明らかにしてきたところである。他方で、社会学的リスク研究のデータベース構築に関しては、ここ2年間において思ったほど進捗していないため、全体的な達成度としては「おおむね順調に進展している」と評した次第である。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終年度となる平成26年度は、まず(1)論文として、「無知をめぐる争いと科学/政治」(東北社会学研究会『社会学研究』第94号、2014年4月刊行予定)を公刊し、次いで、年度内に『リスクの社会学理論』(世界思想社刊予定)を脱稿・公刊する予定である。社会学的なリスク研究の諸潮流をサーベイし整理する作業は、本書内において行う。また(2)しばしば曖昧なかたちで語られることのある「リスク・ガバナンス」の意味内容を明示化するという目的も兼ねて、ドイツの環境社会学者・科学社会学者のOrtwin Renn, Risk Governance, 2008を今年度内を目途に翻訳出版する予定である。また同時に、「社会学的リスク研究」の流れに大きな影響を与えたNiklas Luhmann,Soziologie des Risikosも、単独訳として2014年秋ごろに刊行を予定している。(3)ここ2年間、作業として予定ほど進捗していなかったデータベースの作成および公開に向けた作業は、本学学生による研究補助を得つつ取り組む予定である。そして、(4)こうしたリスクガバナンスが「機能分化」という近代社会の基本構造といかなる関わりを持ちうるのかについては、社会システム理論に知悉している数名の研究者と研究会を実施していく予定である(その研究成果として、2015年度に研究書を共同で刊行予定)。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額として12,988円あり、これが生じた理由は、(1)購入予定の図書が年度内に調達できなかったため、および(2)謝金が今年度0円となったことによる。 このため、これは平成26年度に、図書購入費および謝金に充てる予定であり、平成26年度に合算して使用する。
|
Research Products
(4 results)